演じるにあたって
2.主要キャラクターのイメージはサイトTOPよりご覧いただけます。
3.()は漢字の読み方、または、キャラクターセリフ中の動作を表現します。
4.ーーXXX は状況や動作を表現するト書きです。
5.ーーーーー はシーン転換や間を開けることを意味します。
元魔王 旅人 年齢:数千歳
魔王の娘 年齢:11
イーラの母 探検家 年齢:21歳
劇団の女優 踊り子 年齢:22歳
魔族 呪術師 魔王城の執務間 数百歳(人間年齢25歳前後)
元上流市民の老婆 イーラの祖母 年齢:63歳
演劇団の座長 元魔物 年齢:数百歳
ーーエリスの家が一人で家事をしている。
エリス:なんだかあっという間の出来事でしたねえ。寂しいような、懐かしいような。不思議な気持ちです。ロクシーや、あなたの子も、あなたそっくりでしたよ。はぁ・・・片付けもしないで出ていってしまって。ちょっとイーラの部屋を整理しますかね・・・うーん。さて、広いお部屋はどこでしたっけ。
ーーーーー
ーーヴェルが家を出て行こうとする。
ヴェル:二日にわたり世話になった。
イーラ:・・・
エリス:とんでもございません。私たちの方こそ、お世話になりました。
ヴェル:良い。コーヒーの礼だ。旅をしながら各地を回ってきたが、最も優れておった。
エリス:まぁ。ふふふ。相変わらず大袈裟ですね。
ヴェル:ふむ。
エリス:・・・イーラや。ご挨拶は。
イーラ:・・・ねえ、ばあば。
エリス:なんだい。
イーラ:ばあばは、私がいなくても寂しくない?
エリス:・・・そうさね。もちろん、寂しいよ。
イーラ:・・・そっか。
エリス:イーラや。
イーラ:ううん。いいの。なんでもない。なんでもないの!
ヴェル:ふむ。
イーラ:ヴェル!いっぱいお話してくれてありがとう!
ヴェル:ふむ。
エリス:・・・イーラや。
イーラ:なに?ばあば。
エリス:いつかあなたに見せようと思っていたものがあるのよ。
イーラ:見せようと思っていたもの?
エリス:そう。・・・ヴェル様や、すみませんが、もう少しだけこの場で時間をもらえますかね。
ヴェル:ふむ。構わない。旅人なのでな。
エリス:今、お持ちしますから。二人ともちょっとだけお待ちください。
イーラ:・・・?
ヴェル:ふむ。
ーーーーー
ーーエリスは部屋に戻りロクシーの部屋から一通の手紙を取り出す。
エリス:あったあった。懐かしいですねぇ。この手紙を最初に読んだ時には大泣きしましたっけ。今はなんだか、あの子に背中を押されているようで、不思議なものですねぇ・・・。さて。
ーーーーー
ーー家の外、イーラが悩んでいる。
イーラ:・・・ううぅうぅ・・・
ヴェル:・・・。
イーラ:・・・ううにゃううう・・・。
ヴェル:・・・。ふむ。
イーラ:うぅうぅぅ・・・ねぇ、ヴェル。
ヴェル:ふむ。
イーラ:・・・私がついていったら・・・迷惑?
ヴェル:ふむ。難しい質問だ。迷惑ではあるが、嫌ではない。
イーラ:へ?・・・どういうこと?
ヴェル:ふむ。構わない。ということだ。
イーラ:・・・そっか!・・・ありがとう。ばあば、怒るかな。。。
ヴェル:どうだろうか。わからぬ。
イーラ:うぅうう・・・。
ーーエリスが出てくる。
エリス:お待たせしましたねえ。ずいぶん奥にしまってまして。
ヴェル:かまわぬ。
エリス:ありがとうございます。・・・イーラや、これを。
イーラ:へ?わたしに?
エリス:そうです。あなたのママからの手紙です。
イーラ:え・・・?・・・ママ?
エリス:そうです。今日のような日がくるのでしょうと思い、ずっと大切にとっておきました。あなたのママが私に書いた手紙です。
イーラ:ばあばに?
エリス:そうです。最後に一つだけお願いが書いてありました。さ、開けて読んでごらん。
イーラ:う、、、うん。
ヴェル:ふむ。
ーーーーー
ーーロクシーの手紙
ロクシー:親愛なるママへ。へい!ママ!元気にしてるー?私は超元気よー!ずっと帰れなくてごめんね!魔大陸に来てから私はずーっと楽しくしてました!魔王と結婚するって言った時のママの困った顔、超傑作!面白かったー!
エリス:ふふふ。
ロクシー:大好きな魔王も勿論だけど、魔族のみんなもすっごい優しくてね!私は毎日あっちこっちにいっては、すんごい冒険をしています!いつかママにも聞かせてあげるから楽しみにしててね!こっちに来てから2人の友達に会いました!何にでも化けて大暴れするスーパーマン!掘削機(ドリル)に化けて私の冒険のお手伝いもしてくれるの!「土を掘るぜぇ!どりゃどりゃどりゃあ!」って超面白い!
ヴェル:・・・あの男は。
ロクシー:それとね、なんでも知ってて頭のいい大人の女性!私が持ってきた遺物をなんでも鑑定してくれるウルトラ博士なの!「ロクシーさん、またこんなもの掘ってきて・・・。これは糞の化石です。と言いますか、あなたは魔王様の愛するお方であって、そんな気軽に外出されては、、、ってちょっと!話聞いてますか!?」って何回言われたことやら!私ってなんでこんなにおバカなんだろう!うーん。きっとママに似たのかな!
エリス:うふふ。そうなんでしょうかねえ。
ロクシー:魔王様はね、ヴォルカスっていうの!カッコよくて、優しくて、強くて、なんでも知ってて!ほんっっっとに理想の男性!私が一人冒険に出てって怪我とかすると、すぐ飛んでくる!なんだか、ずーっと見守ってくれるような気がするんだ!きっと神話の騎士様なんじゃないかなって!私は思うの。大切な本で、お家に置いてきたから絶対に1回は読んでね!
ヴェル:・・・懐かしいな。
ロクシー:うーん。他にも書きたいことは一杯あるんだけどね!えっとね、一つだけ、ママに謝りたいことがあるの。最初に元気って書いたのは、嘘。本当はきっとママがこれを読む頃には私はもう死んでいるんだと思う。魔王のお嫁さんなんて、そんなすごいことしちゃったから、一生分の幸せを使い切っちゃったのかも。でも、とっても幸せで楽しかったなぁって。ママや周りのみんなを残して先立っちゃうことが心残りだけど、私はほんっとうに楽しかったなぁって思うの!・・・だから悲しまないでね。先に行っちゃってごめんなさい。ママ、産んでくれて、わがままをたっくさん聞いてくれて、いっっぱい我慢してくれて、ありがとう!ほっとうにありがとう!
エリス:(しくしくと泣き始めて)・・・いつ読んでも、涙が出てくるんです。
ロクシー:しみっぽくなっちゃったね。あ!あとね!私子供が生まれました。名前はイーラって名前にしようと思うの。ヴォルカスの下の名前がディアブロ ローイ、これは魔物の王って意味なんだって!で、私がリュウール、これが輝き。でね、そこに2つ意味を足したいの。イーラ ディアブロ リュウール ドレって名前!どう?かっこいいでしょ!イーラが時代や象徴って意味!ドレが金色って意味!私の友達に、ママのところに連れていってもらうようにお願いしたから、私と思ってしっかり面倒見てあげてよね!
ヴェル:そのようなことを、考えておったか。
ロクシー:私、魔王城から見る朝日が本当に綺麗で好きだったの。人と魔族、二つの大陸一緒に明かりが差すの!ずっと戦争で争い続けているけど、お日様は平等なのよ。私もそんな風にありたいと思ったし、イーラにもそうなって欲しい。なんか、大層な願いかな。あははー・・・。で、その朝日が大好きだったから、そういう名前にしたの!うん!一番大事な伝えたいことは書いたから、これでおしまい!我ながらまとまりないなー。本当に迷惑ばっかりだったけどさ。ママ、ありがとう、大好き!
ヴェル:ふむ。終いか?
エリス:(涙を拭いて)・・・いいえ、続きがあります。
ヴェル:ほう。
ロクシー:追伸!イーラへ!一度も会えなくてごめんね。顔が見れないのが残念だけど、きっと可愛いんでしょうね!私の子だから!魔王様は私の旦那だから!会ったらちゃんと挨拶すること!それと、ぜったいに好きになっちゃダメよ!・・・というのは冗談で。自由に生きなさい。ばあばはきっと心配するけど、大丈夫だから!・・・多分。あなたがやりたいことたっくさんして、たっくさん笑って!・・・ママね、あなたと、ヴォルカスと一緒に、魔王城から朝日をみたかったなぁって今1番思うことなのよ。・・・さて!あなたの行きたい場所へ向かいなさい!旅立ちに臆すことなく!ヴォルカスがあなたのことをきっと見守ってくれるわ。いけ!若者よ!母は応援しているぞー!わっはっはー!あなたの母、ロクシーより。
ヴェル:立派な便りである。
エリス:うふふ。娘らしくて。
イーラ:ぐす・・・うっ・・・うっ・・・ままああああ!ばあばあああ!(エリスに抱きついてなく)
エリス:あらあら。
イーラ:ごめんなさい!ばあば!
エリス:はいな。
イーラ:私!ヴェルと旅がしたい!
エリス:そうですか。
イーラ:私!いろんなもの、みてみたいの!
エリス:うふふ。そんな日が来ると思ってたさね。
イーラ:わあああん!ばあば、大好き、ばあばああああ!
エリス:あらあら。私も大好きよ。イーラ。
イーラ:うわああああん、ばあばあああああああああああ(たっぷり泣きついてください)
エリス:(泣きつくイーラをあやす)
ーーひとしきり泣いて
ヴェル:ふむ。イーラよ。落ち着いたか。
イーラ:(ぐすぐす言いながら)・・・うん。。。
ヴェル:して、行きたい場所は決まったか。
イーラ:うん。。。魔王城に行きたい。
ヴェル:暫くは帰ってこれないが良いか。
イーラ:うん。大丈夫。
ヴェル:ふむ。。。とのことだ、エリスよ。
エリス:あらあら。わかりました。しっかり面倒を見てあげてくださいね。
ヴェル:しっかりと勤めさせていただく。
イーラ:よろしくね!ヴェル!
ヴェル:うむ。
イーラ:ねえヴェル。1つだけ、持っていきたいものがあるんだけど、いい?
ヴェル:かまわない。
イーラ:やった!すぐとってくるねー!(家に向かって走り出す)
エリス:イーラや。
イーラ:なあに?ばあば!
エリス:カバンにちょっとした荷物を入れておいたさね。それも持っていきない。
イーラ:はーい!・・・(家のドアに入る前に)ばあば、ありがとー!
エリス:うふふ・・・では、頼みますね。
ヴェル:ふむ。
エリス:ところで、旅の支度金はあるのでしょうか。
ヴェル:・・・ふむ。
エリス:・・・ヴェル様?
ーーーーー
ーー旅団の大型魔導移送車
オレンド:へぇ〜!それで、街を出るところだった、ふれえんどの俺に、声をかけてきたってことかあ!
ヴェル:そうだ。
オレンド:いんやー!まさか、出会ったその翌々日に同行!とぅぎゃざあ!になるなんてええ!ゔぇえると俺は運命の糸で結ばれているんだねえええ!
ヴェル:私はそうは思わん。
オレンド:おやおやあ?ヴェルのそういうところ、俺嫌いじゃないなぁ!あっはっはー!・・・ところで、ところで!!いいいいいらちゃん!
イーラ:へ!!?
オレンド:ゔぇええるは面白いなあ!こおんなちびっこを連れてきたと思ったら、まっさか、魔王の娘だなんてええ!いいいらちゃん、あなたは本当に、どーたー!魔王の娘なのかあい!
イーラ:わ、わわ、わかりません・・・。でも、多分、そうです。。
オレンド:わあお。
イーラ:こ、怖がったりしないんですか?
オレンド:なんで怖がる必要があるんだあい!こーんなにちっちゃくてかわいい子を前に、怖がってちゃあ損じゃないかあ!どんうぉーりーどんうぉーり!っはっは!レディお手を。
ヴェル:やめろ。
オレンド:はっはっはー!!こっちの大男の方がよっぽどだよねえ、おー怖い怖い。はっはっはー!
イーラ:・・・ねえ!オレンドはヴォルカスのこと知ってるの?
オレンド:んー?ヴォルカス!?んー・・・聞いたことあるような、ないような?うーん。それは誰だい?
イーラ:え?・・・うーん。魔王。
オレンド:へえー!魔王はヴォルカスっていうのかあ!
イーラ:なんで知らないの?
オレンド:およよ!?面白いことを聞く子だなあ!あっはっは!人間の世界じゃ、魔王!と呼ばれているだけで、名前はぜーんぜん聞かなかったから、知らなかったよー!ゔぉるかす、ゔぉるかぁす!うん!覚えたから今は、知ってるさ!
イーラ:オレンドは、ヴォルカスの友達だったんじゃないの?
オレンド:・・・へ?あっはっはっはっはっはっは!!!本当に面白いちびっこいいらちゃんだなぁ!俺が、魔王のお友達!?あっはっはっはっはっはっはっは!!!
イーラ:なんで笑うの!?
オレンド:はっはっは!はー・・・いや、ごめんごめん。そーりーそーりー。
イーラ:むー!
オレンド:おぉ!怒った顔も可愛らしいなぁ!はっはっは!
ヴェル:真面目に相手をしてやれ。
オレンド:はっはっは!わかったわかった。俺はさ!若い時の記憶がないのさ!
イーラ:そうなの?ほんとに?
オレンド:ほんとうさ!こういう話をすると、しみったれな空気になるから嫌なんだけどさ!記憶があるのは、終戦直前にこの劇団に拾われてたってこととー、自分の名前おんりー!何があったんろうだねえ!ばっとばっと!俺は半魔で、魔力は全くないから!多分弱すぎて戦地から逃げたとか、そんなことじゃないかなぁ!って思ってるのさあ!
イーラ:そうなんだ、それでオレンドは寂しくないの?
オレンド:俺が?寂しい?あっはっはっはっはっはっはっはっは!ひーひー!あっはっはっは!
イーラ:どうして笑うの!
オレンド:いやね、どうなんだろうって思ってね。俺はさ!あんまり心ってやつがわからないのさ!あ!なんだろうなあ!全くないってわけじゃないんだ、説明するのは難しいけど、悲しいー、とか、つらいーとか、愛しいー、とかわかんないんだよなあ!
イーラ:そうなの?
オレンド:なんだろうね!悪いことばっかりじゃないよ!自分の感情がない方が、役者としては優秀さ!ぐっどぐっど!役が持っている心をそのまんま飲み込めるんだから!
イーラ:・・・ふーん。
シャンディ:ちょっと座長ー!どこいったんですかー!・・・あ!
オレンド:あらー、ごきげん麗しゅう、シャンディ、今日も綺麗だね!
シャンディ:はいはい。練習すっぽかしてどこに行ったかと思ったら・・・こちらの方々はどなたですか?
オレンド:ふっふーん。俺のふれんどの、変なヴェルと魔王の娘イーラ、さ!
ヴェル:ふむ。世話になる。
イーラ:よ、よろしくお願いします。
オレンド:で、こちらはこの劇団の名女優、プリマドンナのシャンディちゃんです!そしてそしてなんとお!俺の婚約者でもあるのさあ!どうだあ!綺麗だろお!
シャンディ:はいはい。それで、練習サボってた理由は?
オレンド:練習より大事な用事があったからに決まってるじゃないか!そーりーそーりー!大事なふれんどが故郷に帰りたいのに、お金がなくて困ってるなんて聞いてねえ!
ヴェル:う・・・うむ。
イーラ:・・・すみません。
シャンディ:あなたたちが謝ることではないわ。で、座長。どうするの。
オレンド:同行すればいいのさー!旅の友は多い方がいいだろー!
シャンディ:で、どこまで同行する話になっているのかしら。
オレンド:アキュエリまでさ!
シャンディ:・・・ちょっときてください。
オレンド:へ?あ、ちょ!話はまだ終わってなくて!とーきんぐ、とーきんぐ!
シャンディ:関係ありません。いいから。
オレンド:これは!怒られるやつだあああ!ゔぇえええええぇるうう!助けてー!
ヴェル:ふむ。
イーラ:大丈夫かな?
ヴェル:大丈夫であろう。
イーラ:・・・そっか。ヴェルが言うなら大丈夫だね。
ーーーーー
ーー奥でシャンディがオレンドに詰め寄る
シャンディ:アキュエリまでは真っ直ぐ行っても2ヶ月。興行しながら行けば半年近くかかるわ。
オレンド:そうさあ!
シャンディ:まさかその間ずっと、小さな旅芸人の私たちが稼いだ日銭を、差し上げるって話かしら?ねえ?いつから私たちは慈善活動を始めたのかしら。
オレンド:あれ?確かに!お金のこと全然考えてなかったなぁ!はっはっはー!
シャンディ:なめてるの?
オレンド:いっ!ご、ごめんなさい。
シャンディ:で、どうするとかは考えてるの?
オレンド:んー!まったく。でもなあ!俺はゔぇええるに運命を感じてるのさあ!言葉にはできないけど!きっといいことがあると思うだよなあ!
シャンディ:何よそれ。私が降ろしたいと思ってるみたいじゃない。
オレンド:お、おや?違うの!?
シャンディ:当たり前でしょ。婚約者の友達を無理やりおろすはずないじゃない。
オレンド:ぉお!しゃああんでぃいい!さんきゅーなあ!
シャンディ:でも。
オレンド:でも?
シャンディ:お金は別問題よ。
オレンド:・・・ああ!そうだ!
シャンディ:なによ。
オレンド:ヴェルに演劇に出て貰えばいいんだよー!背も高いし、なんか、貫禄あるしい!
シャンディ:・・・まぁ、それでいいわ。
オレンド:よーし決まり!しゃんでぃありがとー!お金のことぜえんぜん考えてなかったなぁ!あっはっはー!さんきゅーなぁ!
シャンディ:はぁ・・・まったく。
オレンド:はっはっはー!さんきゅーなぁ!シャンディ、さんきゅーなぁ!
ーーーーー
ヴェル:(M)それから私たちはアキュエリの街へ向かう道中、演劇の指導を受けつつ、さまざまな街の様子を見て回ったのだ。
ーーーーー
ーーイーラとヴェルが旅の途中の街で
イーラ:ねぇヴェル!あれなーに!
ヴェル:ふむ。野菜露天だ。
イーラ:へえー!あの森みたいなのも野菜!?
ヴェル:そうだ。ブロッコリーという。
イーラ:へえー!すごい形ね!あ!あっちは!?かわいいー!
ヴェル:ふむ。あれはキャンディーという。
イーラ:きゃんでぃー?ってなーに?
ヴェル:ふむ。口に含んで楽しむものだ。
イーラ:へえー!甘いの!?しょっぱいの!?
ヴェル:甘い味のものが多い。
イーラ:へえー!・・・へー・・・
ヴェル:欲しいのか。
イーラ:いいの?
ヴェル:かまわん。なかなか演劇というものは難しいゆえ、まだ賃金は少ないが、買うことはできる。
イーラ:やったー!ねえ、私黒いのがいいー!
ヴェル:ふむ。店主よ、その黒いものをひとつもらおう。・・・ふむ。ほら、イーラよ。
イーラ:にへへ、ヴェルありがとー!いただきまーす!あーんっ!・・・か、かたーい!!
ヴェル:ふむ。舐めて楽しむものだ。
イーラ:そ、そうだったんだ。てへへ。はむ。ん・・・
ヴェル:して、どうなのだ。
イーラ:・・・まずい・・・
ヴェル:ほう。店主よ。黒いのは何味なのだ。・・・ほう。イカスミというのか。知らぬな。
イーラ:・・・ヴェル・・・うー・・・。
ヴェル:・・・店主よ、すまないがもう一つ、赤いのをもらおう。
イーラ:・・・何味なの?
ヴェル:おそらく、いちごという果実の味だ。・・・黒い方は私が預かろう。(飴を渡す)
イーラ:ヴェル、いいの?あっ、ありがとう。
ヴェル:かまわん。
イーラ:でも・・・
ヴェル:・・・イカスミとやらが好物である。
イーラ:ほんとに!?そうなの?
ヴェル:う、うむ。
ーーーーー
ーーその後劇団に戻って
イーラ:ただいまー!!
オレンド:おう、おかえりなさぁーい!って、なんじゃそりゃあゔぇえるうう!あっはっはっはっは!
シャンディ:ふ・・・ふふふ・・・こら、座長、人の顔をみて・・・ぷくく・・・笑ったら失礼ですよ!
ヴェル:私の顔がそんなにおかしいか。
オレンド:ああっはっははは!おかしいってそりゃ、はっはっはっは!
シャンディ:ふ・・・ふふふ・・・!
ヴェル:ふむ。イーラや、私の顔はどうなっておる。
イーラ:え?
ヴェル:ずっと一緒におったのだ、気づいておるのだろう。
イーラ:・・・口が。
ヴェル:口が?
イーラ:真っ黒・・・ぷくく。
ヴェル:・・・ふむ。
ーーーーー
ヴェル:(M)日々の演劇練習も私の勤めである。
ーーシャンディがヴェルの指導をしているのをイーラとオレンドが見ている
イーラ:ヴェルがんばれー!
シャンディ:違う!もっと感情を指先まで表現するの!
ヴェル:こうか。おぉ!姫よ!
シャンディ:違う!何その変な中腰!下げるなら下げる!立つなら立つ!
ヴェル:ふ・・・ふむ。
シャンディ:手足が長いんだからしっかり止めるところで止めないと、タコみたいになっちゃうんだから。
ヴェル:ふむ。私がタコか。
イーラ:ヴェルかっこいいよー!
オレンド:おぉ!?よーし。シャンディも可愛いぞー!怒ってる顔もすてきだぜー!きゅーてぃーきゅーてぃー!
ヴェル:こうか。おぉ!姫よ!
イーラ:ヴェルかっこいー!
オレンド:しゃあんでぃ素敵ー!
シャンディ:はぁ・・・ヴェルさん、ちょっと待っててくださいね。
ヴェル:うむ。
シャンディ:(すぅ・・・)あんたたち!今すぐ出ていきなさい!邪魔なのよ!
オレンド:あっはっはっは!怒られちったなぁ!
イーラ:にへへ〜。
オレンド:でもやっぱり怒った顔もかわいいぜえー!びゅーてぃふぉー!
シャンディ:いいから!すぐ!出ていきなさい!さっさと!!
オレンド:あら、ほんとに怒っちゃったかも!あっはっは!いこーぜー!いーらあ!
イーラ:うん!ヴェル、がんばってね!
ーーーーー
ヴェル:(M)イーラもすっかり馴染んだものだ。誰に似たのやら、ロクシーも不思議と人見知りせぬ性格をしておった。
ーー自分の部屋で物書きをするイーラにシャンディが声を掛ける
シャンディ:あら?イーラちゃん、一人で珍しいわね。
イーラ:んー?そうかな?(物書きをしながら)
シャンディ:ん?何か書いてるの?
イーラ:うん、脚本。
シャンディ:へえー。どんなお話を書いてるの?
イーラ:ママのお話。
シャンディ:へえー。
イーラ:ヴェルが教えてくれるの!
シャンディ:そうなんだ・・・。ねっ、どんなお話なの?
イーラ:(筆を置いて)うーんとね、えーっとー・・・(ちょっと照れ臭そうに笑う)
ーーーーー
ーーサラがヴォルカスに話かける。
サラ:ヴォルカス様、何やら海岸沿いの街で人族の娘が暴れていると報告があったのですが・・・
ヴェル:人族の娘?ふむ・・・。
サラ:船などを見かけた者はおらず、港があるような場所でもなく。私たちが知らぬ術を用いるそうです。
ヴェル:ふむ。オレンドはどうしている。
サラ:今は人族の地の侵攻へ向かっております。
ヴェル:そうか。では、私が様子を見てくることとしよう。
サラ:!?・・・差し出がましいですが、敵の正体は不明であり、万が一でもあれば・・・
ヴェル:私に万が一があるというのだな?
サラ:いえ、失礼しました。
ヴェル:ふむ・・・。今のは、すまなかった。忘れてくれ。ふむ。どうにも、そなたには甘えてしまう。
サラ:・・・どうされました。
ヴェル:サラよ。そなたの心配りには感謝する。が、私も時には外に出て、知らぬ何かを見てみたいのだ。魔王であっても堅苦しい思いをし続けるのはなんとも肩がこるのでな。
サラ:ふ・・・そうですか。
ヴェル:サラよ。そなたも外に出たくなったら言うと良い。すぐにでも聞き届けよう。
サラ:ありがとうございます。
ヴェル:では、様子を見てこよう。何事もなく、帰ってくる。安心すると良い。
サラ:わかりました。お気をつけて。
ーーーーー
ーーロクシーが付近の魔物を蹴散らしている。足元を中心に数メートル範囲に魔法陣が書かれている。そこへヴォルカスが訪れる。
ロクシー:うおりゃあああああああ!どっっっかあああん!・・・ああもう!しつこい!!てええりゃああああああ!どっっっかあああん・・・はあ、はあ!あんたたちねえ!私は探検に来ただけなのに!なあんで食ってかかってくるのよ!邪魔しないで!
ヴェル:ふむ。
ロクシー:はぁはぁ・・・ん?あなた・・・・あなたも私の冒険の邪魔をしようっていうの?
ヴェル:手加減をしたのか?
ロクシー:へ?
ヴェル:死なぬように手加減したか、と聞いておる。
ロクシー:・・・はぁ・・・へぇ。してないって言ったらあなたは私をどうするの?
ヴェル:ふむ。こうする。(手から魔導波が出る)
ロクシー:きゃあ!!危ないじゃない!急に!
ヴェル:ふむ。この魔法陣がその力の元か。(足元にしゃがんで)
ロクシー:ちょっと近寄らないで!!
ヴェル:邪魔だ。(ロクシーを見向きもせず、体から魔導波が出る)
ロクシー:きゃあ!!!ちょ、ちょっと!あんたねぇ!!
ヴェル:ふむ。良くできた古代魔法だ。人の娘よ、どこでこれを知ったのだ。
ロクシー:はぁ!?なんであんたみたいな良くわからないやつに教えないといけないのよ!あんたもトレジャーハンターなの?
ヴェル:ふむ。私を知らぬか。面白い。私はヴォルカスという。魔王だ。
ロクシー:ふーん。私はロクシー!トレジャーハンターよ!
ヴェル:ほう。
ロクシー:世界で一番立派なね!
ヴェル:・・・嘘だな。
ロクシー:う、嘘じゃないわよ!これからなるんだから!これから!
ヴェル:してロクシーよ。この古代魔法は、良くできてはいるが。(指を噛む)
ロクシー:え!?な、何してるの!?
ヴェル:完璧ではない。(少し移動して)ここが間違っておる。
ロクシー:え!?ちょ、ちょっとお!なんで!?
ヴェル:ふむ。これでそなたの力は人並みとなった。観念するとよい。
ロクシー:(前セリフ食い気味で)どうやったの!?ねえ!あなた、古代魔法について知っているの?私も完璧ではないと思っていたんだけど!何が悪いのか全然わからなくて!ねえ!あなたは誰なの!?どうして知っているの!?
ヴェル:ふ・・・ふむ。
ロクシー:私はロクシー!あなたは・・・ヴォルカスだっけ?あ!ヴォルカス!ほんとに!え?ヴォルカス!?私ね、遺跡で見つけた本で読んだことがあるの!あなた、まさか神話時代から生きているヴォルカスなの!?ねえ!
ヴェル:ふ、ふむ。一度、落ち着ける場所に、行かぬか。
ーーーーー
ーーロクシーを連れて魔王城に帰る。
サラ:・・・おかえりなさいませ。ヴォルカス様。・・・その人族はどちら様ですか?
ヴェル:ふむ・・・。
ロクシー:私はロクシー!トレジャーハンターよ!
ヴェル:・・・とのことだ。
サラ:・・・はぁ。で、そのトレジャーハンターが魔王城になんの用ですか?
ロクシー:あなたこそ、誰よ!
サラ:私はサラです。この城の雑務を取り仕切る執務官です。
ヴェル:ふむ。私が招いた。
サラ:見ればわかります。で、な・ん・の用なんですか?
ロクシー:ヴォルカスに古代文明のことを聞きに来たの!ひっ!(胸に違和感を感じる)
サラ:ヴォルカス様のことを呼び捨てにするとは。今この場で呪い殺しましょうか?
ヴェル:サラよ。私が許しておる。
サラ:・・・。そうですか。
ヴェル:そなたの忠義に感謝する。
ロクシー:いっ・・・ふー。。。助かったぁ。死ぬかと思った。
ヴェル:すまぬな。手荒な歓迎で。
ロクシー:いいわよ。どうせ、歓迎されないのはわかってるんだから。
オレンド:はっはっはっはあ!サラは真面目だなぁ!
ロクシー:わっ!わ!
オレンド:そーんなに怒ってばっかりだと幸せが逃げてくぞー!よいしょっと、あんはっぴーあんはっぴー!・・・ほい!
ロクシー:へ?わっ!(はりつけになる)
ヴェル:オレンドよ。悪趣味だぞ。
サラ:帰ってきたのね。
オレンド:はっはっはー!初めまして、ロクシー!俺は傀儡師のオレンドさ!ヴォルカス様が一人で出て行ったってサラが震えた声で連絡してくるもんだからー!きてみたら、可愛い可愛いレディーがいるじゃないかあ!
ロクシー:え!わっ!おっとっと!(無理矢理ステップを踏ませられる)
オレンド:踊ろうぜぇ!!はっはっは!
ロクシー:こ、こら!わぁ!離して!!
ヴェル:うむ。落ち着くのだ。久しく訪れた客人だからといって、はしゃがぬことだ。
ーーーーー
ーーイーラとシャンディが今のシーンについて会話する
シャンディ:ねえ、このオレンドってさ、あのオレンドなのかしら?
イーラ:わかんないの。。オレンド、覚えてないって。
シャンディ:あー。そっか。でもなんか、似てるわね。ふふふ。
イーラ:うん。そっくり。
シャンディ:ね。このシーン、突然オレンドが出てきたように見えたけど、どこかに潜んでたの?
イーラ:うん。ママの鞄の中から出てきたんだって、ヴェルは言ってたよ!
シャンディ:へー・・・。
ーーーーー
ーーオレンドが呪いを解いて話は続く
オレンド:でえ!ヴォルカス様はどーして人族のレーディを連れてきちゃったんですかあー?は!まさかあ!らぶ!?一目惚れですか!?
ヴェル:ふむ。その者が古代魔法の使い手でな。なかなか懐かしきものを見たゆえ、礼として招待をした。
サラ:古代魔法ですか。
ヴェル:そうだ。神代の魔法陣だ。
オレンド:へぇ〜。こんな娘っ子がねぇ〜。あっはっは!
ロクシー:ん!?なによ!こう見えて、人大陸は端から端まで冒険したんだから!そういうあんたは頭がゆるそうな顔してるわね!ふふん!
オレンド:ああん!?おうおう!レーディ!だあれの顔がゆるゆるふぬけ顔だあ!あんぐりーしちゃうぜえ!あんぐりー!
ロクシー:あんたよ!
オレンド:ほーう!ならこれならいいってかあ!(術で自分の顔をロクシーの顔に変える)ほーらほーら!くればーな顔だろー!
ロクシー:ちょ!ちょっとあんた!それ私の顔じゃない!私の顔かえしなさい!
オレンド:やなこったー!はっはっはー!だいたい、ロクシーの顔はそこにあんだろー!悔しかったらここまでおいてー!はっはー!
サラ:はぁ。お子様同士、仲良くやってなさいよ。私はもう戻るわ。何事もなかったみたいだし。
オレンド:はっはっはー!俺は若いからモテちゃってしょーがないもんなぁー!はっはっはー!
サラ:お・・・オレンド・・・あんたそれは悪口かしら・・・?仕事じゃない時にあったら、覚えてなさいよ・・・。
ヴェル:ふむ。
ロクシー:・・・サラさん!
サラ:・・・何?
ロクシー:トレジャーハンターもね、男ばっかりの仕事なんだけど・・・。その、女の子同士!よろしくね!
サラ:・・・よろしく。
ロクシー:えへへ。
サラ:まったく。城内でも気を抜かないことね。戦争で家族を失った魔族は山ほどいるわ。城内は人族を良く思わない魔族ばっかりなんだから。気をつけることね。
ロクシー:はい!ありがとー!サラさんは人族のこと嫌い?
サラ:さぁ?あんまり会ったことがないから、わからないわ。
ロクシー:そっか!
サラ:満足かしら。失礼するわね。
ーーサラが退場する。
ヴェル:ふむ。して、オレンドよ。
オレンド:はいはーい!なんでしょー!
ヴェル:しばらくロクシーの世話を頼む。
ロクシー:は!?なんで私がこんな奴と一緒にいなきゃなんないのよ!
ヴェル:ふむ。私は多忙ゆえ、な。オレンドも戦のない時は城内でも外でも、付き合ってやるが良い。月の出ている間は、古代魔法でもなんでもききにくるが良い。人が休む時間帯ゆえ、まだ暇(いとま)がある。
オレンド:だ、そうだ!よろしくなあ!ロクシー!はっはっはー!
ーーーーー
ーー客間に移動しながら会話する二人
ロクシー:もう!せっかく古代魔法のこと聞けるって思ったのに!
オレンド:んー?夜まで待てば話を聞けるんだろー。うぇいとうぇいと!のんびり待てばいいじゃねーか!
ロクシー:じゃあその間どうしたらいいのよ!こんな自由に動き回れない城で、あぁ。じっとしてるのが一番嫌いなのに。
オレンド:はっはっはー!いいじゃねぇか、たまにはのんびりしよーぜー!
ロクシー:・・・あんたはいいわよね、能天気で。
オレンド:およよ!?はっはっはー!はっぴーだぜえ!すんげー!
ロクシー:はああぁぁあ。
オレンド:ロクシーはさあ、古代文明が好きだったんだっけ?なぁ!
ロクシー:そうよ。
オレンド:へえー!面白いロクシーだなぁ!で、なんであんなのが好きなのよ?
ロクシー:うーんとね。なんとも言えないあの古臭ぁい、けど、存在感がある遺物が大好きなの・・・良く見るとそれぞれ模様が違ってねえー!
オレンド:ほおー!
ロクシー:調べて組み合わせたりして、この世界の真理を読み解いていくような気がするのよ!ああぁ、、、あぁああ・・・
オレンド:おいおい、ロクシー、よだれが垂れてるぞー。
ロクシー:は!!(ずるずる)ちょ!ちょっと見ないでよ!
オレンド:はっはっは!見ないでって、二人でいるんだから、そりゃ無理だろ!
ロクシー:そ、それでもよ!
オレンド:はっはっは!まぁまぁ。じゃあさ!俺いいー場所知ってんだあ!詳しくは知らねーんだけどよ、この城はむっかしは神殿だったらしくてさ!
ロクシー:え!・・・まさか!そっか。魔物の地は神代イルミアの納めた地、ここはイルミアが納めた地、そして魔物の地の中心は魔王城・・・ということは。え!じゃあ!?
オレンド:おお!なんかビビッときてるみたいだなぁ!でな、でな・・・
ーーーーー
ーー夜、列車の中でヴェルとオレンドが会話している。イーラは寝ている。
シャンディ:ってことがあったの!イーラちゃん、きっと、文才あるわよー。
ヴェル:ふむ。
オレンド:おぉおぉ!そりゃいいや!最近は俺の頭もすっからかんになってきたし!
シャンディ:元からすっからかんの間違いでしょ。
オレンド:はっはっは!そうかもなあ!えんぷてぃーえんぷてぃー。
イーラ:くぅー。くぅー。
シャンディ:こんなに騒いでるのに、良く寝てるわねぇ・・・。
ヴェル:うむ。
シャンディ:それで、ヴェルさんは、イーラちゃんが脚本を書いていたのを知っていたのかしら?
ヴェル:ふむ。知っておった。私が演劇の練習に勤めている間、いそいそと何かをしておった。
オレンド:へえー!
ヴェル:夜になると、決まって私のところへきて、昨晩の続きを話せとせがむのだ。
シャンディ:真面目なのね。
ヴェル:イーラも、彼女なりに劇団の力になりたい、そう思っておるのだろう。
オレンド:おぉ!なんといじらしい!それなら、座長たる私が頑張って書いた脚本を、演目に採用してあげようじゃないかあ!
シャンディ:ちょっと、流石に声が大きい。起こしちゃったら可哀想でしょ?
オレンド:おぉ。そうだったーそうだったー。そーりーそーりー。
シャンディ:でも、面白そうね。ちゃんと手直しはすればいい題材な気がするし。
オレンド:そうさ!ふれんどと一緒に、素晴らしい作品に仕上げるなんて、ぐっとな体験じゃないかあー。
ヴェル:ふむ。感謝する。
オレンド:おおよー。
ヴェル:して、オレンドよ。
オレンド:ほいほい?
ヴェル:そなたは半魔だと言ったな。
オレンド:ん?そうさあ!
ヴェル:そなたの魔力がなぜ全くないか、理解しておるか?
オレンド:んー!・・・さあなあ。あーいどーんとのー。
ヴェル:ふむ。
シャンディ:・・・オレンドが失った記憶を取り戻せるのかしら。
ヴェル:そうだ。
シャンディ:や、やっぱりそうなのね・・・!じゃ、じゃあ!
ヴェル:まて、シャンディよ。オレンド、そなたはどう思う。
オレンド:あー・・・あんまり真面目なの得意じゃねえんだけどなぁー・・・。
シャンディ:・・・
オレンド:うーん。もし記憶が戻った俺は、本当に今の俺なのかなぁ、って思うわけよ。
ヴェル:ふむ。
オレンド:でも、俺がどう生きてきたのか、ヴェルたちが話す俺が、俺なら。何があったのか、知りたい気もするんだよなぁ・・・。
シャンディ:確かにそうね・・・あなたの記憶が戻ったら、今のオレンドじゃ、なくなるのかもしれないのね・・・。
ヴェル:ふむ。私の目からみたら、だが、そなたは今も昔もオレンドである。
オレンド:そっかあー・・・。
イーラ:くぅー。ゔぇるー。くぅー。お話ー。くぅー。
ヴェル:ふむ。イーラからそなたに流れようとしている魔素がある。オレンドよ、そなたの魔素だ。気づいておらぬのだろう。
オレンド:ん?まぁ、俺は見えないからなぁ。
ヴェル:そうであろう。おそらく、長らくイーラの中にあり、もう役目を果たしたのであろう。
オレンド:俺が、何かしたかもしれないってこと、かい。
ヴェル:そうだ。・・・ふむ。
シャンディ:・・・私は・・・
オレンド:・・・ん?
シャンディ:・・・私は、あなたにとって私より大切な人がいたとしても、かまいません。
オレンド:シャンディ・・・
シャンディ:あなたはきっとこの劇団以外の世界を知らないから。それって切ないことだと思うの。あなたは昔のことを話す時、いつもちょっと寂しそうな顔をするの。
オレンド:あはは、そりゃ、記憶がなけりゃ誰だってそんな顔するだろ。
シャンディ:どんな時でも笑顔で楽しそうに笑うあなただから、よ。演目の出来が悪くて散々なブーイングをされた時も、呼び込みで丸一日お客さんが入らなかった時も、あなたはいつだって笑顔だったわ。あなたの笑顔に私たちが、どれだけ勇気づけられたことか。そのあなたが、ふと、過去の話をするときだけ辛そうな顔をするのを、ずっと見てきたわ。
オレンド:そりゃ、うーん、そんな顔しちまってたか。
シャンディ:だから、たとえ私より好きな人がそこにいても、構いません。ヴェルさん、オレンドの記憶を戻すことができますか?
ヴェル:ふむ。オレンドよ。
オレンド:・・・思い出したい、と、心は言ってんだ。けど、こええ、こええと頭が思ってたんだ。なんだろうな。俺、自分がいい奴だなんてちっとも思ってなくて、、、なんか、すんげー悪い奴だった気がしてんだ。だから、半魔でもできる、みんなが笑顔になれる何かをやりたいと思って。拾ってもらったのが演劇団でほんっとに良かったと思ってんだ。
シャンディ:オレンド・・・
オレンド:だからさ、どんなにひどく言われたって、どんなに惨めに扱われたって、全く辛くなかった。俺は、なーんにもなかったから。・・・でもずっと刺さるんだ。俺は誰で、どこからきて、なぜ今ここにいるんだろう。って。1から知ってる人はいいさ。気づいた時には、何にもぇあたまんなか、と、ぽっかり穴のあいた心。隠してきたつもりだったけどなぁー。
ヴェル:ふむ。
オレンド:ヴェル・・・あ、ちょっとまってくれ。シャンディ(キスをする)
シャンディ:あ、ちょ、ん・・・
オレンド:・・・うーしっ!大丈夫だ!かむかーむ。ゔぇええる!俺に記憶を、くれくれえい!
ヴェル:うむ。良き心がけだ。少々辛いが、オレンドは大丈夫であろう。行き場を失った魔素よ、主人の元へ変えるのだ。
オレンド:グッ!!あ・・・あああ
シャンディ:オレンド!!
ーーーーー
ーー記憶の中に入っていく
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ヴェル:ふむ。まだかかってくるか。
オレンド:ゆるさねぇ!お前が魔王なんだろ!ゆるさねぇ!!
ヴェル:ふむ。好きにするが良い。そなたが飽きるまで付き合ってやろう。
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ーー戻る
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オレンド:ぐぅ・・・はあ・・・ガハ!
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ーー過去の記憶
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ロクシー:ねえ、オレンドって好きな人いるの!?
オレンド:なあんでそんなこと気になるのかなぁ!まさかロクシー!俺のことが・・・
ロクシー:はあ?何言ってんの。私はヴォルカス様一筋!あぁ・・・ヴォルカス様ぁ、なんであなたはそんなに博識なのでしょう・・・
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ーー戻る
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オレンド:ゲホゲホ、あぁっぁっぁあああ!
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ーー過去の記憶
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サラ:オレンド、あなたにだけ伝えます。
オレンド:なあに!サラ!俺の失恋記念日でもお祝いしてくれるのかなぁ!?あっはっは!
サラ:・・・いえ。私は、次の新月の夜にロクシーを殺します。
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ーー戻る
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オレンド:あああああっぁっぁぁああああああああ!!!
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ーー過去の記憶
ロクシー:オレンド、私のお腹を裂いて。この娘だけ、イーラだけでも守って。
ーー戻る
オレンド:ああああああぁぁぁああああぁぁぁっぁああああ!!!
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ただ君だけを、守りたいと願う〜旅路〜