演じるにあたって
2.主要キャラクターのイメージはサイトTOPよりご覧いただけます。
3.()は漢字の読み方、または、キャラクターセリフ中の動作を表現します。
4.ーーXXX は状況や動作を表現するト書きです。
5.ーーーーー はシーン転換や間を開けることを意味します。
元魔王 旅人 年齢:数千歳
龍人族の長。魔王群の中で人に化けることができる龍の上級魔族。温厚な性格をしている。
魔族の兵士。妻の死を感じ、逃げるオレンドを捉えようとする。
イーラの母 探検家 年齢:21歳
魔王の娘 年齢:11
魅了術が得意な上級悪魔の族長。性的な魅力を持った悪魔。
魔族 呪術師 魔王城の執務間 数百歳
劇団の女優 踊り子 年齢:22歳
演劇団の座長 元魔物 年齢:数百歳
金と権力の神 年齢:数万数千歳
低級悪魔の代表。数や種族が多いが、力はない。
ーーーーー
ーー魔王城でヴォルカスとロクシー、オレンド、サラが会話をしている
ヴェル:ロクシーよ、気をつけるのだ。
ロクシー:うん!ありがと!ヴォルカス!
サラ:戦時ですから、途中何があるかわかりません。細心の注意を払って、警戒を怠らないでください。
ロクシー:うん、サラ、ありがと。
サラ:あなたは悪運が強そうなので、大丈夫かもしれませんが。
ロクシー:ふふふ。そうかもね。サラも体には気をつけて、元気な赤ちゃんが生まれるといいわね。
サラ:ありがとう。
ヴェル:ふむ。オレンドよ、道中を頼む。
オレンド:おおよ!任しときなー!んじゃ、ロクシー、頼むぜぇ、俺はバッグの中でのーんびり寝てるからよ!好きな時に呼んでくれー!
サラ:オレンド、人の街に入る時は、あなたは外で待機すること。
オレンド:サラは心配性だなぁ!魔素感知器があんだろー?わかってるよー!はっはっはー!
ヴェル:ふむ。オレンドも気をつけるのだぞ。
オレンド:おおよー!
サラ:では。
ロクシー:うん!
サラ:またお帰りになる日をお待ちしてますね。ロクシーさん。
ロクシー:うん!ママに顔だけだしたら帰ってくるから!・・・ヴォルカス!
ヴェル:どうした。
ロクシー:ありがとね!色々教えてくれて!・・・大好き!
ヴェル:ふむ。そなたの帰りを待っておる。
ロクシー:うん!・・・じゃ!いこっか!オレンド!
オレンド:おおよー!探検だー!冒険だー!じゃーなー!はっはっはー!
サラ:二人とも、気をつけるのよー!
ロクシー:はーい!二人も元気でねー!
サラ:・・・さて、ヴォルカス様、城へ戻りましょうか。忙しくなりますね。
ヴェル:ふむ。して、サラよ。
サラ:なんでしょう?
ヴェル:そなたには負担をかけて、すまない、と思っておる。近頃、苦慮(くりょ)していることはないか。
サラ:ありがとうございます。そうですね・・・ありません。オレンドが不在となると少し、寂しくなるなぁ、ということでしょうか。
ヴェル:そうか。
サラ:はい。
ヴェル:重さを感じたら、私のところへ来ると良い。
サラ:ありがとうございます。
ヴェル:抱えがちなそなたのことだ、無理に介入すると気に触るであろう。無理強いせぬが。サラもまた、私の大切な者の一人である。
サラ:・・・ありがとうございます。身に余る光栄です。
ーーーーー
ーー魔王城でヴォルカスとロクシー、オレンド、サラが会話をしている
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悪魔族長:で、魔王様が溺愛した人族の女は人里へ返したと!なぜだ!なぜ殺さぬのだ!
サラ:先回の会議でも説明したはずですが。ロクシー様は我が軍の新たな魔鉱石の調達源の発見や、時に城近くの魔族の救助にも参加しています。
悪魔族長:ふん、だからなんだと言うのだ!
龍人族長:呪術師の女(おなご)よ。そこまでは許そう。じゃが、傀儡の長を人族の街にまで同行させる理由は何か。わしは魔王様を信じておるが、さすがに寵愛が過ぎるのではなかろうか。
サラ:お言葉ですが。ロクシー様は魔王城で今後も過ごされるご予定です。魔王様との婚姻を人族の習慣にならい、母に報告したいと。いずれオレンド共にお戻りになります。
悪魔族長:なんと!では、また愚かな人風情が私たちの城を汚して回るのか!聞けば、好き放題城を動き回っているという!呪術師よ、貴様の管理が甘いのではないか!
淫魔族長:まぁまぁ、みなさん。ねぇ、サラさん。私たち戦争で戦う者たちへの気持ちはどうなっているのかしら。私の部族は人族の兵士にひどく気に入られて、散々な仕打ちをされて壊れて消える者もおりますわ。流石に何もお咎めなし、なんてことにはいかないのだけれど。
サラ:だから何度も説明したはずですが。人にも様々な者がいると。ロクシー様は我々に危害を加える者ではありません。・・・これ以上このくだらない問答を続けるのであれば、魔族らしく、力で確かめ合いますか?どうしてもわからないようですから。
悪魔族長:ふん。貴様に勝てないことなど分かっている。ここは力で争う場ではない。
龍人族長:そうじゃ。わしらは憂いておる。この魔王軍が瓦解するのではないか、と。
淫魔族長:うふふ。それにしても、わかりませんねぇ。あなたほどの術者なら、月の刻印でも使えば、そのロクシーという女を簡単に手にかけられそうなのに。
サラ:そのようなことをするつもりは毛頭にありません。
龍人族長:まぁ、わしらが敗北したとしてもそなたの責任ではない。ただ、わし等龍人が魔素に還るそれだけじゃ。
悪魔族長:俺は納得いかねぇ!くそ!負け込んでるってのによ!
淫魔族長:サラさんの立場が辛いことは私たちもわかりますけど、あなたが選ぶしかないのよ。私たちには魔王様の目を盗んでその女を手にかける力はないわ。ねぇ。選べるのはあなただけ。ふふふ。
悪魔族長:ふん、では、解散とするか。
サラ:・・・はい、では族長の皆様、また次の満月の夜に。・・・まったく、毎回同じ話の堂々巡り。腹が立つわね・・・もう!・・・もう・・・。はぁ、ねぇヴォルカス様、私は、どうしたら良いのでしょうか・・・。あなただったらどうするのかしら、オレンド・・・。だめね、なんか、いないっていうだけで感傷的になりすぎるのは。。。でも、私にだってわからないわよ・・・。ロクシーは悪い人じゃない、けど・・・。けど!
ーーーーー
ーーオレンドが車になってロクシーを運ぶ
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オレンド:ぶるるーんぶるるーん!はっはっはー!車ってのも悪くねーなー!ぐっどぐっどー!
ロクシー:すごいオレンド!はやーい!!
オレンド:だろー!でよ、この先だったっけ?ロクシーのママが住んでる街よ!
ロクシー:そう!この道をまっすぐ行くの!あー・・・久しぶりだなぁ!
オレンド:お?嬉しいのか?なぁ。
ロクシー:そうよ!ママ、元気かなぁ。
オレンド:そっかー!ママも人なのか?
ロクシー:そうよ!
オレンド:へー!しっかし、この辺はのどかだなぁー!ぶるるーん、ぶるるーんっと!
ロクシー:そうねー。。。昔から全然変わってない。
オレンド:魔海溝から遠いところはこんな感じなんだなぁー!はっはっは!俺らのところとそんな変わんねーな!
ロクシー:そうよー!だから、なんであんなに争っているのか、不思議よ。
オレンド:そっかー!確かにな!はっはっは!
ロクシー:あんたって本当に気楽ね。逆に感心しちゃうわ。
オレンド:ん?そうか?
ロクシー:私のね。私のお父さんは戦争でなくなったわ。
オレンド:そうなのか?
ロクシー:うん。
オレンド:それなのに魔大陸に来て、ヴォルカス様のこと好きになっちまったんだな!
ロクシー:た、確かにそうね。
オレンド:はっはっはー!やっぱりロクシーは変わり者だなぁ!
ロクシー:あ!あんたに言われたくないわよ!
オレンド:あー?やっぱ、寂しいのか?
ロクシー:どうだろう、うーん。。うん。ちょっと寂しいかな。
オレンド:そっかー!じゃあ俺がパパになってやろうか?
ロクシー:絶対イヤ!
オレンド:はっはっは!そーかそーか。そーりーそーり。じゃあ、兄ちゃんとかどうだ?
ロクシー:え?うーん・・・それなら、確かに嫌じゃない・・・かな?・・・うーん。。考えておくわね。
オレンド:おぉ!さんきゅーなぁ!
ロクシー:え?うん。どういたしまして。・・・あ!見えた!
オレンド:お?あれがロクシーの故郷かー!
ロクシー:そう!あぁ・・・懐かしいなぁ!
オレンド:はっはっはー!じゃぁ、ラストスパートだな!飛ばすぜー!ぶるるーん!ぶるーーん!
ロクシー:わっちょっと!危ない!オレンドあぶない!
オレンド:ぶるるるーん!ぶるるーん!はっはっはー!
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ーー魔王城でサラとヴェル
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ヴェル:ふむ。ついに来るか。ギルディ。
サラ:そうですね。諜報部門の傀儡師より人族の老師が出陣すると、連絡がありました。
ヴェル:そうか。また、長き戦いになるな。
サラ:大丈夫ですか?
ヴェル:私は大丈夫だ。ただ、奴の術は強固ゆえ、私はギルディの術を抑えること以外、できぬだろう。
サラ:金剛檻(こんごうかん)ですか。
ヴェル:そうだ。戦場において、やつの周りを金色(こんじき)の檻へ封じる術である。
サラ:全く厄介な術です。
ヴェル:ギルディは戦場の先頭に立ち、私を真っ先に封じにかかってくるであろう。封じられては、皆が屠(ほふ)られるのをただ眺めてなければならぬ。死よりの苦痛が、その檻には待っておる。
サラ:私も戦地へご一緒できれば良いのですが。
ヴェル:気にするな。そなたは城を守っておる。これほどなく、感謝しておる。
サラ:ありがたきお言葉です。
ヴェル:・・・子供は、生まれたのか。
サラ:えぇ。先日生まれまして、今は夫が面倒を見ております。
ヴェル:そうか。おめでとう、サラよ。
サラ:ありがとうございます。
ヴェル:して、オレンドはいつ頃戻るのか。
サラ:そうですね。予定では、次の侵攻の前には戻るかと。
ヴェル:そうか。・・・サラよ。
サラ:なんでしょう。ヴォルカス様。
ヴェル:何か、私に伝えるべきことはあるか?
サラ:・・・いえ、一通り報告はさせていただきました。
ヴェル:・・・そうか。わかった。・・・そなたには、いつも苦労をかけるな。
サラ:とんでもありません。ヴォルカス様こそ、たまにはお休みされてはいかがでしょうか。
ヴェル:ふむ。そのようなことも、良いかもしれんな。
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ーー魔族の会議
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悪魔族長:ちい!人族の老師め・・・ついに我々を滅ぼすつもりか。
サラ:数回の敗北を経て、人族はかなり強気な攻勢に打って出ようとしているようです。当然、その中には人族の老師も含まれます。今回の戦いが正念場となることでしょう。
龍人族長:そうじゃろう。族長のわしらも出ないとやられるかのう・・・。
悪魔族長:で、近衛の傀儡師は戻るのか!くだらん人族のお守りに出て、まさか戦場に戻らんのか!こんな窮地に!
サラ:・・・!!!黙りなさい!!オレンドは戦火が上がる前には戦線へ戻る予定です。
龍人族長:・・・落ち着きなされ。
サラ:・・・失礼しました。
淫魔族長:ふふふ、サラ様が動揺するなんて珍しいわねぇ。
悪魔族長:っけ!!で、まーた人族の女を連れて帰ってくんだろー!!
サラ:そ、それは・・・。
悪魔族長:こっちは命懸けで戦ってんのによ。あー、もうやめだやめだ。俺たち悪魔族は次の戦線には参加しねぇ。(会議を出ていく)
龍人族長:・・・むぅ・・・。数が多い悪魔が出なくては、戦線の維持も苦しいか・・・。
淫魔族長:そうねぇ・・・。
サラ:・・・。龍人様、淫魔様、悪魔の長を止めてもらえませんか。・・・お願いします。
龍人族長:・・・サラ殿・・・。
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ーーロクシーが帰ってくる
ーーーーー
サラ:おかえりなさい、オレンド、ロクシー。予定よりずいぶんと遅くなりましたね。
オレンド:おー!ただいまー!はっはっはー!そーりーそーりー!サラー、寂しくて泣いてなかったかー!
ロクシー:ただいまー!サラさん!!
サラ:どうでしたか、人族の街は。
オレンド:いやー!俺は中には入れなかったからよー!わかんねーけど!こっちとあんま変わんねーなぁ!って。
サラ:そうですか。
ロクシー:ママにちゃんと会えたよー!
サラ:そうですか。それで、婚姻のお話は出来たんですか?
ロクシー:うん!・・・って、結構ぼろぼろに怒られて、飛び出してきちゃったんだけど・・・えへへ。
サラ:あら、人族にもまともな方いるものなのですね。
オレンド:ロクシーがおかしなだけだろー!はっはっは!
サラ:オレンド、あなたは人のことを何も言えませんので。
オレンド:およよ?はっはっはー!そうかもな!
サラ:それにしても、ロクシーさん、なんか、ちょっと見ない間に・・・、いえ・・・
ロクシー:あ、太ったって・・・?
サラ:あ、そうですね。
オレンド:ちっちっちー!サラ、ちげーのさー!ロクシーなぁ!子供ができてたんだとよー!
ロクシー:あ、こらオレンド!私が言おうと思ってたのに!
オレンド:どんななんだろーなー!赤ちゃん!だってよー!はっはっはー!
サラ:そうですか、ヴォルカス様の・・・。お、おめでとうございます。
ロクシー:・・・そう。ヴォルカスの。えへへ。こんなに早くお母さんになると思ってなかったけど。
サラ:動くの?
ロクシー:最近は、結構動くかなぁ。
サラ:そう。ちょっと、触っていいかしら?
ロクシー:ん?いいわよ。
オレンド:サラ。
サラ:何かしら?
オレンド:あんまり乱暴に触んなよー!大事に運んできたんだからな!はっはっはー!
サラ:・・・そうさせてもらうわね。
ロクシー:どう?
サラ:・・・
ロクシー:何か感じる?
サラ:・・・そうね。ヴォルカス様と近い魔素を感じるわ。・・・あなた体は大丈夫なの?
ロクシー:へ?んー・・・なんともないかなぁ。
サラ:そう、そうなのね。ふふふ、よかったわね。ロクシー。おめでとう。
オレンド:おー!おめでとー!これだからよー、帰りはちょーっと飛ばすのをやめて、のんびーり帰ってきたわけよー!そして遅くなったのさー!はっはっはー!
サラ:そうだったのね。オレンドが調整をできるなんて、知らなかったわ。
オレンド:はっはっはー!まぁな!自分でもびっくりだったぜー!
サラ:何よそれ。っさ、二人とも、お城に入りましょう。疲れたでしょうから。
ロクシー:はーい!
オレンド:おうよー!
サラ:あ、オレンドは、戦線会議の方へ顔を出せるかしら?ちょうど大会議室で他の族長たちとヴォルカス様が話をしているわ。
オレンド:えー・・・帰ってきていきなり会議かよ・・・。ばっどー・・・。
サラ:しょうがないじゃない。人族の大規模な侵攻があるのよ。
オレンド:そーかー!じゃ、まぁ行ってくるかねー!はっはっはー!
ーーーーー
ーーその夜、オレンドの自室にて
ーーーーー
サラ:(ノックして)オレンド、いるかしら?
オレンド:(ドアを開けて)お?お?さあらああ!珍しいなぁ!俺のところに来るなんてえ!
サラ:そうですね。初めてかもしれません。
オレンド:はっはっはー!珍しい夜だなぁー!さ、はいったはいったー!
サラ:では、失礼するわね。
オレンド:で、どうしたのさ!こんな夜に。
サラ:・・・。ロクシーはヴォルカス様のところですか?
オレンド:そうだぜー。ちょっとだけ結婚式?的なやつをするって意気込んでたぜ。
サラ:そうですか。
オレンド:で、言いたいことはそれじゃないだろー?どうしたー?
サラ:・・・
オレンド:はっはっはー!言いにくいことかー?待つぜ待つぜー!うぇいとうぇいとー!
サラ:はぁ・・・。あなたは全く。
オレンド:おー?いつも通りだろ、はっはっは。
サラ:・・・オレンド、あなたにだけ伝えます。
オレンド:なあに?サラ!俺の失恋記念日でもお祝いしてくれるのかなぁ!?あっはっは!
サラ:・・・いえ。私は、次の新月の夜にロクシーを殺します。
オレンド:・・・やっぱりかー・・・。
サラ:気付いていたんですか?
オレンド:そうさ。
サラ:また、いつもの勘ですか?
オレンド:いんやー、サラ、その右目、どうしたんだ?
サラ:・・・。
オレンド:そりゃ、傀儡だろ?
サラ:そうです。・・・今日、すぐわかりましたか?
オレンド:そりゃそうさ。というか、傀儡師の俺に分かって欲しい、って感じだぜ。はっはっはー。
サラ:そうですか。そうかもしれませんね。・・・止めないんですか?
オレンド:あー?いや、止められるなら止めてーけど。もう、止まんねーんだろ?・・・こりゃ勘だ。
サラ:そうですね。止まりません。
オレンド:で、何があったのさ。
サラ:新月の刻印です。
オレンド:なんだそりゃ。
サラ:月の刻印の一つです。呪術は術者の魔素を使って行いますが、月の刻印は、術者の何かを代償に、呪いをおこないます。
オレンド:そうかい。それで目かい。
サラ:そうです。新月の刻印は、明かりを失う代わりに、呪いを成就させるものです。
オレンド:さっき触った時か?
サラ:そうです。術者の魔素を使わないので、たとえ私が死んでも、呪いは消えません。
オレンド:そうかい・・・。
サラ:・・・怒らないんですか?
オレンド:いやー・・・怒ってもどうしようもないんだろ・・・。
サラ:そうですね。
オレンド:それによ。
サラ:・・・それに、なんですか?
オレンド:俺、サラのことも好きだからよ。
サラ:・・・そう、そうですか。では、伝えることは伝えたので、私はこれで。
オレンド:おう。おやすみなー!サラ!
サラ:・・・おやすみなさい。
オレンド:・・・なんだ、なんだよ・・・なんなんだよ・・・。
ーーーーー
ーー魔王の部屋でヴェルとロクシー
ーーーーー
ヴェル:ロクシーよ・・・。
ロクシー:うん・・・。
ヴェル:ロクシーよ、今戻った。
ロクシー:ん・・・。ヴォルカス・・・?ふぁあああ・・・ずいぶん遅くまで会議してたのね・・・ヴォルカス。
ヴェル:すまぬ。もう明け方であるか。
ロクシー:ふぇ・・・そうね、ふふふ。
ヴェル:・・・よく戻った。ロクシー。
ロクシー:ヴォルカス、ただいま。
ヴェル:ふむ。
ロクシー:えへへ。・・・ね、見て、これ。
ヴェル:・・・ほう。そなたと私の子か。
ロクシー:そう!・・・ママには内緒にしてきちゃったけど・・・てへへ。
ヴェル:っふ。そうか。
ロクシー:ふふふ。嬉しい。
ヴェル:そうか。見ても良いか?
ロクシー:うふふ。いいわよ。
ヴェル:では・・・ほう(お腹を触る)・・・!・・・ふむ。
ロクシー:・・・?どうしたの?急に険しい顔して。
ヴェル:ふむ。気にするな。幼き命だが、魔王の魔素をしっかり持っておる、と思ってな。
ロクシー:うん。そう、あなたの子だから。ふふふ。
ヴェル:そうか。
ロクシー:ね、男の子かな?女の子かな?
ヴェル:ふむ。女子(おなご)である。
ロクシー:へぇー・・・ヴォルカスって何でもわかるんだね。
ヴェル:ふむ。
ロクシー:そっかー、女の子かー・・・ふふふ・・・
ヴェル:・・・
ロクシー:・・・さて、今日はどうしよっか・・・。なんか、結婚式って言っても、二人だけだし。何していいかわからないね。
ヴェル:ふむ。
ロクシー:もう寝ちゃったから、髪の毛もぐちゃぐちゃ。夜はちょっと整えたんだけど・・・。
ヴェル:かまわん。
ロクシー:うふふ、ありがと。
ヴェル:・・・
ロクシー:・・・
ヴェル:ふむ・・・ロクシーよ。
ロクシー:なに、ヴォルカス。
ヴェル:・・・そなたの一生で一度しか目にすることができぬ。
ロクシー:・・・うん?
ヴェル:よく見ておくとよい。
ロクシー:・・・ふふふ。うん。
ヴェル:(咳払いをして)我が生涯の友愛を其方に捧ぐことを誓う。この心身が貴女と共に、永遠にあることを愛の女神イルミアに契ろう。願わくば、我が求愛を受け入れてはくれぬか。最愛なる君よ、私は、そなたを愛しておる。
ロクシー:ふふふ、はい、ヴォルカス様、お願いします。
ヴェル:ふむ。騎士の身で姫の寵愛を賜(たまわ)ること、この身に余る幸福である。では、姫よ、その御身を失礼させていただこう。(キスをする)
ロクシー:(キスをされる)ん・・・あ・・・ん・・・。
ヴェル:ロクシーよ、愛しておる。
ロクシー:・・・ふふふ、久しぶりだからかな。恥ずかしいね。
ヴェル:ふむ。
ロクシー:・・・ヴェル?
ヴェル:・・・どうした。
ロクシー:・・・泣いてるの?
ヴェル:ふむ。・・・嬉しくてな。
ロクシー:ふふふ、私も。
ヴェル:ロクシーよ、私は、永遠にそなたと共にあると誓おう。
ロクシー:うふふ。どうしたの、大袈裟なんだから。
ヴェル:ふむ。
ロクシー:・・・ね、ヴォルカス。
ヴェル:どうした、ロクシーよ。
ロクシー:・・・綺麗ね。
ヴェル:ふむ。
ロクシー:・・・私ね、ここから見る朝日が大好きなの。
ヴェル:・・・そうか。
ロクシー:今日はお月様も一緒なのね。なんだか、私とヴォルカスみたいだね、ふふふ。
ヴェル:・・・あれは、有明の空に昇る、暁月(ぎょうげつ)という。
ーーーーー
ーーそして、夜が明け、戦争の火蓋が切って落とされる。
ーーーーー
サラ:ヴォルカス様、人族の戦艦が見えました。巨大戦艦20隻、飛行砲台が50機も見えています。霧の向こうにはさらに倍近い兵器があると思われます。
ヴェル:ふむ。ギルディめ。
オレンド:おぉおぉおぉー!すげーなー!こんなすげーの見たことねー!
サラ:オレンド、出撃する傀儡の戦艦は15隻でよいですか?
オレンド:おおよ!
サラ:・・・大丈夫ですか?そこまでの数をあなた一人で操れるんですか?
オレンド:はっはっはー!さぁなー!でもやらなきゃ負けんだろ?
サラ:・・・そうね。
オレンド:なら、やるしかねーだろー!はっはっはー!
ヴェル:オレンドよ。
オレンド:おおよー?なんだー!ヴォルカス様よー!
ヴェル:すまんが、そなたも城に残ってもらえぬか。
オレンド:へ?・・・お、おい!ど、どういうこと、ですか?
ヴェル:ふむ。私はもう、そなたにしか、頼めないのだ。
オレンド:・・・おい!!ヴォルカス様よ!!そりゃねえよ!俺だって戦わせてくれよ!!
サラ:・・・。
ヴェル:・・・。
オレンド:わかったよ・・・。わかった。
ヴェル:すまない。帰ったら、そなたの願いを好きなだけ聞き届けよう。
オレンド:願いか・・・わかった。
ヴェル:サラよ。
サラ:なんでしょうか、ヴォルカス様。
ヴェル:留守を頼む。そなたの忠義に感謝しておる。
サラ:・・・!・・・とんでもありません。お気をつけて。
ーーーーー
ーー戦地にて
ーーーーー
ヴェル:聞くと良い!私に忠義を立てた者共よ、そなたらをこの戦火に落とさせはせぬ。このヴォルカスが全ての魔族の陽光となるのだ!!
ギルディ:勇ましいなあヴォルカスよ!
ヴェル:ギルディか!
ギルディ:久しいのう。何年ぶりだか!
ヴェル:ふむ。2度と貴様の面(ツラ)を拝むつもりはなかったのだが!
ギルディ:余は嫌われておったか!!
ヴェル:当然だ!
ギルディ:わざわざ、貴様が地に伏せて泣き喚く様を見にきてやったというのに、つれぬ旧友じゃ。
ヴェル:ほう。その薄ら笑いを今に剥がしてくれる!
ギルディ:がっはっは!心待ちにしているわい!・・・さて、もう言葉は、いらぬ!!!行くぞ叡智なる神の子らよ!!終わらせるのだ!己の手で!その己の足でな!敵は風前の灯火である!!
ヴェル:もの共!魔王の気を受け取ると良い!・・・して、ついてくるのだ!私は、私たちは帰らねばならぬ!!誰一人として、死なせはせぬ!!
ーーーーー
ーー演劇の最中、オレンドが抜け出す。
ーーーーー
シャンディ:ちょ、ちょっと!座長!!ね、ねぇヴェルさん!座長知らない?
ヴェル:ふむ。おらんのか?
シャンディ:そうなのよ!もうすぐ出番だっていうのに!もー!どこに行ったのよ。
ヴェル:ふむ・・・。
シャンディ:あーもう!どうすんのよー!!
ヴェル:シャンディよ。
シャンディ:な、何?
ーーーーー
ーー2階のバルコニーでイーラとオレンド。
オレンド:おー、こんなバルコニーがあったかー。ぐっどな眺めだぜー。
イーラ:あ、オレンド。
オレンド:今日で、俺たちの公演も終わりだなー!
イーラ:そうだね。
オレンド:イーラはどうしてこんなところにいるんだい?
イーラ:なんか、ちょっと夕日が見たくなったの。
オレンド:そうか。
イーラ:今日で終わりなんだなぁって思うと、ちょっと寂しいの。
オレンド:そうかー。
イーラ:・・・オレンドは寂しくないの?
オレンド:んー?寂しいさぁ!でもな、みんなでやってきた時間が終わっちまう、って考えるんじゃなくてよ。
イーラ:ん?
オレンド:こんなに楽しい時間を過ごせて幸せだなぁー!って思うようにしてんのさ!はっはっはー!
イーラ:・・・そっか。そうだよね。
オレンド:でな、イーラ。俺、ずっとイーラに言いたかったことがあるんだけどよ。
イーラ:何?オレンド。
オレンド:・・・ごめんな。イーラの母ちゃん、俺が殺しちまった。
イーラ:・・・。いいよ。
オレンド:・・・。
イーラ:私、オレンドのことも大好きだから。
オレンド:は・・・ははは、はは、あっはっはっはっはっは!・・・ぐす・・・ありがとな、イーラ!おいおいおい!(頭わしゃわしゃ)
イーラ:(頭わしゃわしゃされて)わっわっ!
オレンド:よっしゃー!ラスト!決めてくるかねー!はっはっはー!
イーラ:むー。
オレンド:イーラ、さんきゅーな。
ーーーーー
ーー魔王の自室ロクシーとオレンドがいる。
ーーーーー
ロクシー:ゲホッゲホッゲホッ・・・
オレンド:ロクシー・・・大丈夫か。ロクシー!なんとかして、少しでもよくしてやるからよ・・・。
ロクシー:ぜぇ・・・あ、ありがとうオレンド。
オレンド:い、いや、いいんだ・・・
ロクシー:大丈夫、むせただけだから。痛くも、なんともない。
オレンド:そうか。でもよ・・・
ロクシー:ね、オレンド・・・お願いしてもいい?
オレンド:お、おう、なんでも言ってくれよ!
ロクシー:手紙を書きたいの。ママに、バッグから紙とペンを取ってくれるかしら?
オレンド:お、おうよ。(ゴソゴソ)あ?どれだ?・・・
ロクシー:多分、外側のポケットに入っているわ。
オレンド:これか、ほ、ほいよ。ロクシー。
ロクシー:ありがとう。う・・・あはは、段々体が動かなくなってきた。
オレンド:じゃあ、俺が代わりに書くか?
ロクシー:え?オレンドって人の文字がわかるの?
オレンド:い、いや、わかんねぇ・・・。
ロクシー:あはは、じゃあだめじゃん。
ーーーーー
ーー壁を伝いながらサラが魔王の城に入ってくる
サラ:あら、オレンド、やっぱりこちらにいたのね。
ロクシー:サラさん。
オレンド:なんだ、なんだよ、今更。
サラ:何って、ロクシーに会いにきたのよ。
オレンド:・・・なんでお前が会いにくんだよ!!!!
サラ:いいじゃない。声を荒げないでもらえるかしら。
ロクシー:サラさん・・・。
サラ:・・・オレンドから全部聞いたのね?
ロクシー:はい。
サラ:・・・そう。
ロクシー:・・・サラさんも、なんですか?その顔色・・・。
サラ:あら、そんなに悪いかしら。私の顔色。
ロクシー:ふふふ。真っ白よ。
オレンド:あ!?・・・お、おい!サラ・・・
サラ:ばれちゃったかしら。私も。自分を呪ったの。
オレンド:おおおおおいおいおいおいおいおい
サラ:ふふふ。真っ暗ってこんなに怖いのね。
ロクシー:サラさん・・・。ゲホゲホッ!
オレンド:お、おいロクシー!
ロクシー:大丈夫、ありがとうオレンド・・・ぜぇ。なんで?なんでサラさんまで?
サラ:色々あるわ。ヴォルカス様を裏切ったこと、親友を殺してしまうこと・・・、結局こんなになって、非情になりきれない自分にも。。。
ロクシー:・・・。そう。
サラ:・・・オレンド、ちょっといいかしら。
オレンド:な、なんだよ。
サラ:私をロクシーの近くに連れて行ってもらえるかしら?
オレンド:・・・ほら、つかまれよ。
サラ:ふふふ。ありがとう。
オレンド:・・・。
サラ:オレンドの手ってこんなに暖かいのね。
オレンド:お、へ?な、あ!?
ロクシー:ふふふ。
サラ:・・・うふふふふ。ありがとう、オレンド。えっと、ロクシー?(ロクシーを手探りで探して)
ロクシー:サラさん、ここよ。
サラ:あ・・・(抱きついて)ロクシー・・・ごめんなさい。ごめんなさいね。
ロクシー:・・・いいのよ。
サラ:・・・いいえ、私のことは許さなくていいわ。本当にごめんなさい。
ロクシー:ううん。だって、サラさんがやることだもの。きっとこうしないと、いけなかったのかなって。
サラ:・・・違うわ。私は、私たちはたくさんの選択を間違えたの。無為に争い続けたことも、負けることを恐怖したことも、何もかも。その結果、私はあなたを呪うしか道がなくなってしまったの。本当に、本当に、ごめんなさい。
ロクシー:いいよ。それだって、一生懸命サラさんは選んできたんだと思うの。私よりずっと色んなことを考えて、戦ってきたすごい人だから。
サラ:ロクシー・・・。うっふふふ。私が慰められてたら、本当にみっともないわね。
ロクシー:あ、あはは。そうね。
サラ:ゲホゲホッ!・・・ありがと、ロクシー。
ロクシー:どういたしまして。
サラ:オレンド、ねぇ。
オレンド:なんだよ。
サラ:あなたにも本当にごめんなさいね。
オレンド:い、いいよ。俺はしなねぇから。。。
サラ:そんなこと言わないで。会ったばかりの時あなたが私に言った言葉、覚えているかしら?
オレンド:なんだよ。
サラ:見も知らぬ私に、強くなって守ってやる、って言い放ったじゃない。
オレンド:・・・そ、そりゃあ、まぁ。
サラ:年甲斐もなく、とっても嬉しかったのよ。
オレンド:そ、そうかい。
サラ:そこから、一緒にお城で働いて。あなたはみるみるうちに成長した。今ではもしかしたら私より強いかもしれないわ。
オレンド:そ、そんなことねぇよ。
サラ:謙遜(けんそん)しないで良いわよ。あなたは強くなったわ。・・・今まで私のことを支え続けてくれてありがとう。あなたの底抜けな明るさと、折れない心にずっと支えられてきたんだなって、あなたがいない数ヶ月、すごく思ったの。
オレンド:さ・・・さら・・。
サラ:わたし・・・わたし・・・本当にあなたに助けられてたんだって思った。本当に思ったの・・・!
オレンド:お・・・俺も・・・俺だって・・・そうだったよ!俺だってそうだったよ!
サラ:・・・そう。ふふふ。じゃあ次に会う時、別の形で会えるなら、私はあなたを選ぶようにするわ。ありがとう、オレンド。
オレンド:サラ・・・さら・・・・
サラ:さて、伝えることは伝えたし、私は裏切り者に相応しい場所へ行くわ。よいしょっと。
オレンド:・・・待てよ!待てよ!サラ!・・・
サラ:まだ何か用かしら?
オレンド:俺さ・・・サラを裏切り者にしたくねぇよ・・・
サラ:・・・あら、どういうことかしら・・・?
オレンド:・・・ッ!(腕でサラを刺す)
サラ:ぅっ・・・ゲホゲホ・・・
ロクシー:!?・・・オレンド?
オレンド:俺が、裏切り者になる。俺が、この部屋で全員ぶっ殺して逃げ出したんだ・・・。
サラ:ゲホ!・・・オ、オレン・・ド・・・?
オレンド:俺も好きだった。サラ。ずっと一緒にいられて楽しかった。さんきゅーな。
サラ:・・・そう。ふふふ・・・。ヴォルカス様になんて言い訳してもらおうかしら。
オレンド:はっはっは・・・適当に言っておくさ。。。
ロクシー:体が・・・消えていくのね・・・。
サラ:そうよ。私たち魔族は死ぬ時に魔素へ還るの・・・。
オレンド:・・・おやすみ、なぁ、サラ。
サラ:それじゃあ、おやすみなさい。
オレンド:・・・ぐす・・・
ロクシー:・・・
オレンド:・・・グス・・・グス・・・
ロクシー:ね、オレンド。
オレンド:なんだよ・・・。
ロクシー:・・・手紙が書けたの。
オレンド:手紙?
ロクシー:そう。ママへの手紙。
オレンド:そうか・・・。それをロクシーの故郷の家に届ければいいんだな。
ロクシー:そう、お願いできるかしら?
オレンド:あぁ。どうせこれから脱走者さ。人大陸でも魔大陸でもかわらねぇ。
ロクシー:ふふふ、ありがとう。・・・それとね、もう1つだけお願い聞いてくれるかしら?
オレンド:あ、あぁ、言ってくれ。
ロクシー:オレンド、私のお腹を裂いて。この娘だけ、イーラだけでも守って。
オレンド:・・・
ロクシー:オレンド・・・お願い!!
オレンド:でもよ・・・そりゃぁ、ロクシーが・・・
ロクシー:もうね、自分の命がなくなってきているのがわかるの。イーラの魂も持っていかれちゃう・・・。
オレンド:でもよぉ!!できねぇよ!やりたくねぇよ!
ロクシー:・・・わがままばっかりでごめんね。最後の、最後のお願いだから。
オレンド:・・・
ロクシー:・・・
オレンド:・・・わかった。・・・ぐす・・・ロクシー・・・
ロクシー:なに?
オレンド:(1つの小さな傀儡を渡して)・・・これ、噛んどけよ。
ロクシー:ありがと。
オレンド:すげーいてーから我慢しろよ。
ロクシー:いいわよ。・・・(傀儡を噛んで)大丈夫。
オレンド:いくぞ・・・。
ロクシー:ひっ・・・いいぃぃいぃぃいぃい・・・はぁはぁ
オレンド:・・・大丈夫か?
ロクシー:大丈夫、でも、、、はぁ・・・辛いから一気にお願い。。。
オレンド:先に意識を飛ばした方が・・・?
ロクシー:ううん。このままお願い、イーラの顔が見たいの。(傀儡を噛んで)
オレンド:・・・わかった。じゃあ、いくぞ。
ロクシー:うん。・・・いぃいいいいいいいぃぃぃい・・・いぎいいぎいいいいいいいいいいい・・・・・・・ああぁあぁ・・・あぁ・・・はっはっはっ・・・。
オレンド:・・・いた。ちっちぇ。これが赤ちゃんか?
ロクシー:はぁはぁ・・・そう。
オレンド:取り出すぞ・・・。
ロクシー:うん。・・・いっ・・・。
オレンド:大丈夫か?なんか、繋がってるけど、これは・・・?
ロクシー:ちょ、ちょっと待って・・・。うん、切って。それと、イーラ、イーラを・・・頂戴。
オレンド:あ、あぁ。
ロクシー:ふぅ。ほら、イーラ、こら、泣きなさい、イーラ、こら、イーラ。
オレンド:な、何してんだ?
ロクシー:人の子はね、生まれた時に、泣かないと死んじゃうの。こら、イーラ、こおら。・・・あっ・・・ふふふ。イーラ、よかった。・・・よかった・・・イーラ。
ーーーーー
ーー演劇が終わってお客様を送り出すみんな。
ーーーーー
オレンド:はーい!おかえりなさーい!ありがとー!さんきゅーなー!え?そんな!ちっちゃな劇団ですよ。あっはっは!あ!お次の方もおかえりー!さんきゅーなー!え?握手!照れちゃうなあ!
ヴェル:ふむ。
オレンド:おー!マダムのみなさま!え!泣いてメイクが崩れて、どうしてくれるの!?大丈夫ですよー!いまも十分びゅーてぃーですよー!ぐっどぐっどー!はっはっはー!さんきゅーなぁ!
シャンディ:あ!ありがとうございましたー!あら、サイン?いいわよ、どこに書けばいいかしら?はーい。シャツね。どうぞー!シャンディよ。次もぜひよろしくお願いしますね。
イーラ:わっわ、え、えっと。ありがとうございました!・・・ふぇ!?・・・そ、そうです。私です。えへへ。
オレンド:おかえりなさーい!さんきゅーなあ!え?ハグ?それはダメだぜマダム!そいつは有料なのさぁ!でも今日は気分がいいからタダにしちゃうぜぇ!はっはっは!お次の方もおかえりなさーい!さんきゅーなー!
シャンディ:え?可愛いですか?あら、お上手なおじさまですねー!うふふ。あ!おさわりはダメですよ。奥様と楽しんでくださいね。はい、おかえりなさーい。ありがとうございましたー。
イーラ:わ・・・わわ・・・ふぇ?あ・・・はい!え?そうです。あ、ありがとうございました。・・・えへへ、お城を目指してるんです。はい!頑張ります!
ヴェル:・・・見事だ。
ーーーーー
ーーお客がはけた後に。
ーーーーー
シャンディ:ふー・・・。おわったー・・・なんだか、あっという間の4日間だったわねー・・・。
オレンド:ほんとだなぁ・・・はっはっは。疲れたぜ。(周りに)おーい!みんなー!しばらく休憩だー!休まったら片付け始めるぜー!・・・ふぃー!
シャンディ:はぁー、お疲れ様、座長。
オレンド:お!おう。さんきゅーなぁ。
ヴェル:ふむ。
オレンド:おー、ヴェルの魔王、かっこよかったぜー。ぐっどぐっどー!
ヴェル:そなたの方が演技は秀でておる。
オレンド:はっはっは、そりゃそうさ。長くやってるからなぁ。
イーラ:シャンディ、オレンド、ヴェルも!お疲れ様!・・・はい!これ!
シャンディ:あら、イーラちゃん、何かしら。
ヴェル:コーヒーか。頂戴する。
オレンド:はっはっは、ませてんなぁ。さんきゅーなぁ。
シャンディ:ふふふ。ありがと、イーラちゃん。
イーラ:うん!・・・ね、ヴェル、どう?おいしい?
ヴェル:ふむ・・・(コーヒーを飲んで)・・・エリスのものには劣る。修行をするとよい。が・・・良き味である。イーラの心がこもっておる。
イーラ:・・・にへへ。練習して上手になるね!ねっねっ、オレンドとシャンディは?
シャンディ:うん。美味しいわよ。
オレンド:うめぇうめぇ!ぐっどぐっどさー!
イーラ:やった!
ヴェル:ふむ。
シャンディ:(コーヒーを飲んで)・・・ふー・・・
オレンド:(コーヒーを飲んで)・・・はー・・・。
ヴェル:・・・して、オレンドよ。
オレンド:あ?何だよヴェル。
ヴェル:そなたに伝えねばならぬことがある。
オレンド:およ?なんだよ。ヴェル。
ヴェル:長旅を世話になった。
オレンド:あ?いいっていいって、俺も楽しかったさ。
ヴェル:それと、立派な長になったな。
オレンド:(鼻先につーんときて泣き始める)・・・お、おいおい・・・
ヴェル:そなたは、私が知る中で最も優れた長の一人である。
オレンド:ちょ、ちょっと待てよ、ゔぇる・・・
ヴェル:誠に、大義であった。心から礼を言うぞ、オレンドよ。
オレンド:おいおい・・・ぐす・・・おいおい・・・ぐす・・・おい、そ、そりゃ、反則、反則だろおおおお!反則だろゔぇるよおぉお・・・すまねぇ、、、すまねぇ、、、ゔぇるよお、ヴォルカス様よおおおお・・・本当に、本当に、守れなくて、すまねええ!すまねぇええよおおぉおぉお・・・!!!
シャンディ:ふふふ。
イーラ:えへへ。
ヴェル:ふむ。
ーーーーー
ーーオレンドが魔王城から逃げている
ーーーーー
オレンド:(走りながら)くそ・・・サラの呪いが・・・!弱えけど残ってやがる!頼む!死ぬな!死ぬんじゃねぇ!!
魔族兵:まて!!とまれ!!
オレンド:あぁ!?止まってる暇はねえんだよ!!どけえええええ!!!(飛んで逃げようとする)
魔族兵:貴様!妻を、サラをかえせえええええ!!!(呪術で引き戻そうとする)
オレンド:あぁ!?ぐぁ!・・・おいおい!今はそんなところじゃねぇんだ!
魔族兵:だまれ・・・だまれ!!ここで、大人しく捕まれ!オレンド!
オレンド:うるせぇ!止まれねえんだ!じゃまだああああ!!!
魔族兵:ぐあああ!
オレンド:俺は先に行く!!
魔族兵:とまれええ!
オレンド:・・・なんなんだよ、なんなんだよ!立ち上がってくんじゃねぇよ!
魔族兵:サラを!サラを・・・!返せ!
オレンド:どけよおおお!!
魔族兵:ぐあああ!!・・・・っく・・・サラを・・・。
オレンド:頼むよ・・・今この子を呪いから守りながら人の街まで行かなきゃなんねぇ・・・限界なんだよ!手加減なんかもうできねぇんだ!殺しちまう!殺したくねぇんだ!頼むから、どいてくれよ!!!
魔族兵:だ、だまれ!・・・とまれ、とまるんだああ!
オレンド:くそ、くそくそ、どけよおおおおおおおお!!!
ーーーーー
ーーロクシーの故郷について
ーーーーー
オレンド:やっとついた・・・。あぁ?腹減ったか、イーラ。お前も災難だったな。ここ1ヶ月くらい、俺の魔素しか食ってねぇもんな。そりゃ腹減るわな。はっはっは。さーてと、どーやって入るかなぁ。魔族は街に入れねぇしなぁ・・・。あー・・・ちょっとまてよー・・・人型ってまだあったかなぁ・・・。あ・・・。ははは、あったあった。こんなのがあったなぁ。・・・なぁ、イーラ、これみえるかー?俺が大切な人に見せた誕生日プレゼントさ。あんときゃほんとに楽しかったなぁ・・・。で、今生きてるのはこの人だけさ。ははは。。。他はみんな俺が殺しちまった。。。さて、男の俺はこいつを使うさ。ちょっと気が進まねぇけどな。・・・よっと。・・・んじゃ、最後の仕上げさ。
シャンディ:(遠くから)ちょっとー!ねぇー!ここで誰か倒れてるんだけどー!・・・ねぇあなた大丈夫ー?
オレンド:さて、捕まって記憶を引っ張られちまわないように、まずは・・・俺の頭を・・・あと、1時間かな。記憶よ消えろっと。・・・おー。どんどん消えてくなーはっはっはー。と、俺の大切な魔素ちゃんよ全員、イーラを呪いから守ってくれ。その呪いが消えるまで、ずっとな。よっと・・・ふー・・・。うっ、くらっときた・・・すっからかんだなぁー・・・。さて・・・んじゃ、急いでロクシーの家にいかねぇと・・・。
シャンディ:(少し近くなって)ねぇ、ねぇ!大丈夫ー!?おーい、おーい。
オレンド:おー・・・消える消える。ばあさんにはイーラも手紙も渡したし、これで・・・あれ?誰だっけ?俺、誰から頼まれてたんだっけ?・・・手紙・・・あれ?何持ってきたんだっけ、あー、わっかんねー・・・あっはっは・・・。
シャンディ:ねぇ、あなた、大丈夫?
オレンド:・・・あ?
シャンディ:あ、よかったー・・・。目が覚めたのね。
オレンド:・・・サラ?
シャンディ:ん?私は、シャンディよ。あなたは?
ーーーーー
ーーただ君だけを、守りたいと願う〜暁月〜