ただ君だけを、守りたいと願う〜王冠〜

演じるにあたって

1.あらすじはスクリプト一覧よりご覧ください。

2.主要キャラクターのイメージはサイトTOPよりご覧いただけます。

3.()は漢字の読み方、または、キャラクターセリフ中の動作を表現します。

4.ーーXXX は状況や動作を表現するト書きです。

5.ーーーーー はシーン転換や間を開けることを意味します。

登場人物

ヴェル

元魔王 旅人 年齢:数千歳

神兵騎士(ヴェル兼役推奨)

神兵騎士 年齢:20歳前後

イーラ

魔王の娘 年齢:11

淫魔族長(イーラ兼役推奨)

魅了術が得意な上級悪魔の族長。性的な魅力を持った悪魔。

ビビアン

神兵団筆頭騎士 神の力 年齢:46歳(体は20歳前後)

龍人族長(ビビアン兼役推奨)

龍人族の長。魔王群の中で人に化けることができる龍の上級魔族。温厚な性格をしている。

ギルディ

金と権力の神 年齢:数万数千歳

悪魔族長(ギルディ兼役推奨)

低級悪魔の代表。数や種族が多いが、力はない。

隣人(男)(ギルディ兼役推奨)

イーラと同じ村に住む男性 年齢:20歳前後

ただ君だけを、守りたいと願う〜王冠〜

ーーーーー

ーー団長席(競技場中央)からギルディ

ーーーーー

ギルディ:がっはっは!見事な剣闘であった!バルミスへ集いし子等よ、その目に焼き付けたか?魔族の王は、そなたら人の騎士の首を跳ね飛ばさんかった!これぞまさしく、今の世が平和であることの象徴よ、のう!なんと素晴らしいことか!

イーラ:(啜り泣く)ぐす・・・ヴェル・・・ぐす・・・本当に・・・本当に、大丈夫なの・・・?・・・ぐす。

ヴェル:うむ。大丈夫だ。

イーラ:(啜り泣く)ヴェルが大きな声で、悲しんでたから・・・

ヴェル:ふむ。・・・心配をさせたな、すまなかった。

イーラ:うっ・・・ううん、いいの、、、よかった、よかった。

ヴェル:・・・イーラよ。

イーラ:なに?ヴェル・・・?

ヴェル:ありがとう。感謝しておる。

イーラ:ふぇ・・・、うぅううぅぅ・・・

ーーヴェルに縋ってなく、ビビアンに声をかけられるまで、しくしくと泣き続ける。

ヴェル:ふむ。

ビビアン:完敗です。ヴォルカス、いえ、ヴェルさん。

ヴェル:そうか。

ビビアン:死ぬ覚悟で、この場へ参りましたが、まさか、このような結果になるとは思っていませんでした。

ヴェル:・・・そうか。

ビビアン:・・・まぁあなたが私の首を落とさないことも想像はしてましたが。

ヴェル:・・・そうか。

ビビアン:・・・あなた、何か言ったらどうですか?

ヴェル:ふむ。

ビビアン:あれだけ、色々されて何もなしですか?

ヴェル:あるには、あるが。

ビビアン:あるにはあるが、なんですか?

ヴェル:ふむ。ビビアンよ。

ビビアン:なんですか。

ヴェル:手合わせを、感謝、する。

ビビアン:・・・ふ・・・あっはっはっははは!・・・そうですか。

ヴェル:ふむ。

ビビアン:私も、あなたと打ち合えて、楽しかったです。そうですね、良い思い出になりました。

ヴェル:そうか。

ビビアン:えぇ。・・・では、イーラさん。

イーラ:(泣き止んで)ふぇ?

ビビアン:いきますよ。こちらに。

ーーーーー

ーー戦争のシーン、人類の撤退。

ーーーーー

ビビアン:全隊!!生き残っているものは今すぐ引きなさい!!

神兵騎士:っは!!

ビビアン:私が退路を開きます!!ついてきなさい!

ーー空でギルディとヴェル

ギルディ:落とせると、思ったのだが、のう。

ヴェル:・・・私は・・・

ギルディ:ぬぅ?どうした、何を泣いておる。

ヴェル:私が・・・。・・・私が戦う意味とは・・・。

ギルディ:・・・ぬぅ。

ヴェル:なぜ、私は、ここにおるのだ・・・。

ギルディ:知らん。

ヴェル:・・・サラよ、ロクシーよ・・・。

ギルディ:それを余に聞いて、どうする。

ヴェル:・・・私は、なぜこうも、愚かなのだ・・・。

ーー地上では撤退を急ぐ

悪魔族長:いかせねぇ!!

ビビアン:どきなさい!!

悪魔族長:ぐぅう!・・・っち!逃すなぁ!!!

ビビアン:邪魔です!

ーーぐおおああああ ー 横から死人兵が突撃してくる

ビビアン:(横から剣戟をくらう)っくぅ!!

神兵騎士:ビビアン隊長!!

ビビアン:・・・全く・・・大丈夫です。

神兵騎士:で、ですが!

ビビアン:軽症です!!死人・・・なんと厄介な者どもですか。

悪魔族長:おらぁ!敵は弱ってるぞお!逃すなあ!!

ビビアン:・・・っく!!どきなさい!!

淫魔族長:ふふふ、いかせないんだから!(魔法)

ビビアン:危ない!!全隊!魔導シールドを貼りなさい!!

神兵騎士:がはあああ!

悪魔族長:形勢逆転だな。

淫魔族長:散々やってくれたお礼をたーっぷりと返してあげるわよ。

ビビアン:っく!!砲兵!!相殺してください!私は、切り込みます!!

ーー空でヴェルとギルディのところに龍人族長が来る

龍人族長:魔王様!魔王様!!

ヴェル:・・・龍人・・・。

龍人族長:今が、好機です、撤退を許さず、せめましょう!

ヴェル:しかし・・・

龍人族長:魔王様!

ヴェル:・・・私は、本当に魔王なのだろうか・・・

龍人族長:サラ殿が決死の覚悟で作ったのじゃ・・・!!

ヴェル:・・・サラ・・・私は・・・

龍人族長:魔王様!!

ーーーーー

ーー現在に戻り

ーーーーー

ーー再度団長席(競技場中央)からギルディ

ギルディ:では!これより表彰を行う!ちぃと先走ったが、そこにおる姫に余の代わりをさせることとしている!がっはっは!しっかりとヴォルカスを称えてやれ、のう!

ビビアン:では、いきますよ。

イーラ:うん・・・うん・・・ヴェル・・・(立ち上がる)

ビビアン:では、ヴォルカスさんも、表彰台の前へ。

ヴェル:ふむ。

ーーイーラ、表彰台まで歩き始める。

イーラ:(ちょっとぐずりながら歩く)

ビビアン:失礼します。姫様、階段があります。お足元にお気をつけください。

イーラ:あ、ビビアンさん、ありがとうございます。

ビビアン:とんでもございません。どうぞ、こちらに。

イーラ:は、はい。

ビビアン:・・・

イーラ:・・・あ、あの・・・

ビビアン:(小声で)胸を張ってください。今日のあなたは、私がこれまで見た女性の中で最も美しいです。

イーラ:え・・・うぅ・・・恥ずかしい。

ビビアン:(小声で)しゃきっとなさい。

イーラ:は、はい・・・。はい。

ビビアン:(小声で)ふふふ、素敵です。姫様。では、こちらで、私は失礼いたします。

イーラ:あ、ありがとうございます。

ビビアン:とんでもございません。姫様のお側にいられて、多幸なる一時でした。では。

ーーーーー

ーー戦争のシーン

ーーーーー

ギルディ:・・・ヴォルカス。

ヴェル:っ!・・・なんだ・・・。

ギルディ:奮い立てぬか?

ヴェル:・・・。

ギルディ:・・・そうか。・・・がっはっは!貴様は・・・いや、なんでもないわい。また、次の戦場で、のう。

龍人族長:人族の老師め!逃がさん!(噛み付く)

ギルディ:ぬぅ、バカの一つ覚えよ。イキリたつでない!!(頭を抑える)

龍人族長:・・・馬鹿力め・・・!!

ギルディ:・・・いたずらが、すぎたか、のう。

龍人族長:ぐぅ・・・!(噛みつこうとしてびくりとも動かない)

ギルディ:・・・貴様は・・・!!(体をひねって)

龍人族長:っ!なにを・・・!

ギルディ:寝ておれ。っ!!(龍の喉をなぐる)

龍人族長:ぐぅ!!(喉元を思い切り殴られ、気を失い落ちていく)

ギルディ:・・・ぬぅ。

ビビアン:はぁあああ!!!・・・道が開けました!!全隊!急ぎなさい!!

神兵騎士:っは!!

ビビアン:撤退!!撤退です!!!

ーーーーー

ーー現在に戻り

ーーーーー

ギルディ:では・・・(立ち上がって)

ギルディ:鎮まれ、子等よ!この10年隠れておった、魔族の姫様のお披露目だか!その声をよく聞き、今日の類なき奇跡を噛み締めよ!

ギルディ:この1日をなんとする?1000年も争いあった我々が互いに祝福を送るこの1日を!余は今この時を生きておって幸せと思っている!では!魔族の姫よ。

イーラ:は!はい!・・・え・・・えと、えっと・・・

ヴェル:ふむ。

イーラ:あと・・・えっと・・・

ヴェル:・・・ふむ。

イーラ:・・・えと・・・

ヴェル:・・・イーラよ。

イーラ:は、はい。

ヴェル:・・・緊張しておるのか。

イーラ:・・・う、うん。

ヴェル:ふむ。・・・私もだ。

イーラ:・・!ヴェ、ヴェル・・・。(ちょっと泣きそうになって)

ヴェル:そうだ。私も、緊張しておる。

イーラ:・・!・・・そ・・・そっか。うん。(ちょっと泣きそうになりながら)

ヴェル:ふむ。

イーラ:ありがと、ありがと。(ちょっと泣きそうになりながら)

ヴェル:かまわん。

イーラ:で、では・・・(台本を読み始める)ヴォルカス様、終戦10年のこの神前試合の優勝、おめでとうございます。

イーラ:私たちのこの世界のため、その日々の研鑽と鍛錬を表し、ヴォルカス様、あなたを今世一の騎士として、

イーラ:私、イーラ ディアブロ リュウール ドレがここに表彰します。

イーラ:今日(こんにち)の平和は、過去を戦い散った多くの命によって齎(もたら)されました。

イーラ:私たちは、今日という日を心から愛しく思い、・・・その感謝とともに、次の時代へ向けて歩むことを忘れません。

イーラ:どうか、ヴォルカス様、あなたの・・・

イーラ:(感極まって台本にないことを言い始める)・・・ヴェルの、ヴェルの道に沢山の幸せがあることを本当に!願ってます!!

ヴェル:・・・!

イーラ:ヴェルは・・・!ヴェルは、いつも寂しそうだから!!ヴェルはいっつも一人で悩んで、

イーラ:一回も寝ないで、ずっといろんなこと考えて、ひとりでいっぱいいっぱい苦しんで!!・・・それなのに!

イーラ:い、いつも!見守っていてくれて、いつもそばにいてくれて!!・・・ぐす・・・ぐす・・・(泣きながら)

ーーーーー

ーー過去の話

ーーーーー

ビビアン:はぁああ!!(剣を振って)

ビビアン:死人め!!(剣を振って)

ビビアン:いったい!!(剣を振って)

ビビアン:どれほどいるんですか!!(剣を振って)

神兵騎士:撤退!てったあああい!

ビビアン:急ぎなさい!長くは持ちません!!(剣を振って)

ーー過去の空でギルディとヴェル

ヴェル:・・・ギルディ・・・

ギルディ:・・・なんだ、か?

ヴェル:私は、なぜ・・・

ギルディ:・・・なぜ?

ヴェル:なぜ、負けたのだ・・・

ーー今に戻りイーラ

イーラ:ヴェルの目を見ているとわかるの!ずっと一人で抱えてきたんだって!

イーラ:私!なんにもしてあげられなくて!・・・私じゃ何もできなくて!

ーー過去の空でギルディとヴェル

ヴェル:ギルディ・・・頼む・・・

ギルディ:なにを、だか。

ヴェル:私の・・・大切なものを、返せ・・・返してくれ・・・

ギルディ:・・・できん。

ヴェル:頼む・・・。

ギルディ:・・・余が、手引きしたことではない。

ヴェル:・・・ギルディ・・・もし・・・

ギルディ:もし?

ヴェル:もし、できぬなら・・・できぬなら、この価値なき命を・・・!!ここで、亡き者と!!!

ギルディ:よく休め。余は、いどころが悪くなった。戦場で、そんな面を晒しおって。興が、冷めたわ。

ーー今に戻りイーラ

イーラ:さっき戦ってる時、ヴェルは心でずっと泣いてたの!わかるの!!

イーラ:なのに!私は・・・ヴェルのこと、全然知らないで・・・!

ーー過去の空でヴェル

ヴェル:なぜ・・・なぜ私は・・・今ここにいるのだ。

ヴェル:神から授かった力で人に仇なし。

ヴェル:語りかける友を過酷なる道へ追いやり・・・

ヴェル:愛する君の最後を知りながら側にあることもなく!

ヴェル:付き従うそなたが命をかけて見出した光明すらを捨て!!

ーー今に戻りイーラ

イーラ:でも!でもね!!私は、私はヴェルの罪なんかじゃない!!

イーラ:ヴェルがずっと頑張って戦ってきたからここにいる!私は、その証なの!!

ーー過去の空でヴェル

ヴェル:この場に立つことなど!!許されるものか!!

ヴェル:この私など!!!世にあってはならぬ、害悪である!!

ヴェル:この命など!!!今すぐに塵と消えてしまえば!!!・・・塵と消えてしまえば・・・

ーー今に戻りイーラ

イーラ:だから責めないで!!そんなに悲しい目をして、いつも心の中で泣いて!!

イーラ:私が、私が!ヴェルが生きる意味になるから!

ーー間を開けて

イーラ:・・・一緒に、一緒に魔王城に行こう、帰ろう。そして世界に登る朝日を見よう!!

イーラ:ヴェルと一緒じゃなきゃだめ、だめなの!!ヴェルは私にとって、いつだって私を照らしてくれるお日様だから!

イーラ:・・・だから、ヴェルには確かめて欲しい。確かめて欲しいの!あなたにとって、この世界は、なんなのかを・・・。

ヴェル:・・・

イーラ:・・・

ヴェル:・・・すまなかった、イーラ。

イーラ:・・・ふぇ?・・・ヴェル?

ヴェル:心配を、かけたな。

イーラ:・・・うん。

ヴェル:私は、大丈夫だ。

イーラ:・・・う、うん・・・うん・・・。

ヴェル:・・・っ!(イーラを抱いたまま立ち上がって)

イーラ:わっ!?(急に抱かれて驚く)

ヴェル:・・・ものども!!!聞くといい!!私は、そなたらと千という時を違(たが)えてきた!!私が愛するものたちのため!!そして・・・その時代はすでに過ぎた!!私は、そなたらへ振り上げた腕を下ろした。どうか!そなたらも私たちへ向けた剣(つるぎ)をおろして欲しい!私は負けたのだ。・・・多くは望まぬ。たが!・・・ギルディ!!

ギルディ:ぬぅ?なんだ、ヴォルカス。

ヴェル:次、イーラを傷つけてみよ。私は、またすぐにでもこの世界の敵となろう。・・・私が心から守りたいと願う、ただ一人がために!!

ギルディ:そうか。・・・がっはっは!!そうか、そうか。心得ておこう。

ヴェル:・・・以上だ。

イーラ:ヴェ、ヴェル・・・?

ギルディ:・・・そうか。達者な口上であった!!なんとすがすがしい日か!では、・・・騎士の子等よ!祝砲をあげよ!!!

ーー夜空に花火が上がり始める

ビビアン:お師様。

ギルディ:おぉ。もどったか。

ビビアン:よかったのですか。

ギルディ:よい。素晴らしい、働きだった。

ビビアン:ありがとうございます。

ギルディ:今日は・・・ぬぅ。

ビビアン:どうされましたか。

ギルディ:酒でも飲むとするか、のう。

ビビアン:・・・そうですか。では、たまにはお酌でもしましょうか?

ギルディ:・・・いらん。よく休め。

ビビアン:ふ・・・そうですか。では、お言葉に甘えて。しばし休んだら、酒場へ参りますね。

ーーーーー

ーーイーラとヴェル(抱っこされたまま)

ーーーーー

イーラ:・・・ねぇ、ヴェル。

ヴェル:どうした。

イーラ:花火、綺麗ね。

ヴェル:そうだな。

イーラ:・・・なんか、・・・ぐす・・・不思議だね。

ヴェル:そうか。

イーラ:・・・

ヴェル:・・・

イーラ:・・・ねぇ、ヴェル。

ヴェル:どうした。

イーラ:・・・ただいま。

ヴェル:・・・無事で、無事でよかった。イーラよ。

イーラ:・・・うん。

ヴェル:・・・私も心配をかけて、すまなかった。

イーラ:・・・いいよ、ヴェル・・・

ヴェル:・・・ありがとう。私のために、涙を流してくれて。

イーラ:・・!?いいの、いいの・・・!私こそ、ヴェル、いつも、ありがとう、ヴェル・・・!

イーラ:(首に手を回して、抱っこされたところからキスをする)

ヴェル:!?・・・んっ(キスをされる)

イーラ:んっ・・・あ・・・(口を離して)はぁ。・・・

ヴェル:・・・イ、イーラよ。

イーラ:・・・にへへ・・・優勝の、ご褒美、です。

ヴェル:・・・そうか。

ーーーーー

ーーお祭りを見て回る二人

ーーーーー

イーラ:わー・・・!ね、見てみて!あれ!

ヴェル:ほう。

イーラ:あのおーっきいなのは何?

ヴェル:あれは・・・魔導航空機か。

イーラ:まどう、こうくうき。へぇー!あれがそうなんだ!

ヴェル:しかし、私の知るものより数倍もある。

ビビアン:イーラさん、ヴェルさん。

イーラ:わっ!ビビアンさん!

ビビアン:今日はお疲れ様でした。

ヴェル:ふむ。そなたも。

イーラ:お、お疲れ様でした!

ビビアン:ありがとうございます。お二人は、そちらを見ていたんですか?

ヴェル:ふむ。そうだ。

イーラ:ね、ビビアンさん!あれはなんですか?まどうこうくうき?

ビビアン:惜しいですね。あちらは、魔導旅客機です。

イーラ:まどう、りょかくき?

ビビアン:そうです。戦争のためではなく、長距離の人の往来のため、空を飛ぶ魔導移送車です。

イーラ:へぇー!乗れるの!?

ビビアン:いいえ、こちらは今この工業区先端開発の展示物です。まだ、大人数を乗せて飛行を行うには、安全性や魔鉱石の消費量に問題があるそうです。

ヴェル:ほう。

イーラ:へぇー・・・。

ビビアン:ここ、工業区は様々な分野の開発の成果を展示しています。

イーラ:うん!見て回ってたの!

ビビアン:そうですか。・・・なかなか、変わった趣味をしていますね。

イーラ:ふぇ?そ、そうかな?

ビビアン:観光区では、食べ物や娯楽、芸術などそういったものが展示されていますから。そちらの方が面白いのかなと思っていました。

イーラ:そ、そうかな?うーん・・・

ビビアン:それとも、ヴェルさんのご趣味ですか?

ヴェル:ふむ。イーラが望んだことだ。

ビビアン:へぇ。そうなんですか?

ヴェル:うむ。

イーラ:なんか、ね。・・・えへへ。ギルディさんとか、ビビアンさんと話をしてて、みんな頑張ってるんだなぁって思って・・・それで、ちょっと見たくなったんです。

ビビアン:そうですか。

イーラ:あっ!でも、その、ご飯とか絵とか作る人が、頑張っていないってわけじゃないんですけど・・・。

ビビアン:わかりますよ。イーラさん。

イーラ:ふぇ?

ビビアン:私も剣を志すものとして、一つの分野を探求する心はよく理解できます。

ビビアン:なんといいますか。この物から感じる意匠に、己の背中を押されるような、感覚でしょうか。

ヴェル:・・・そうか。

ビビアン:ヴェルさんはいかがですか?お好きですか?

ヴェル:わからん、が、人とは逞しい者達だ、と思っている。

イーラ:ね、ね、ヴェル。

ヴェル:どうした、イーラよ。

イーラ:私達もこのまどうりょかくきに乗ったら、魔王城まで一っ飛びなのかな?

ヴェル:ふむ。わからん。ビビアンよ。これは、魔導航空機などより速いのか。

ビビアン:私も詳しくは知りませんが、3倍ほどの速度だそうです。何やら、早く飛ぶことで燃料が少なく済むのだとか。

ヴェル:ほう。

イーラ:ほぇ〜・・・すごいね、なんで?

ヴェル:・・・わからん。

イーラ:ヴェルでも、知らないことがあるんだね。

ヴェル:そうだな。数えきれぬほどある。

ビビアン:船で1ヶ月の距離を、1日で移動できるでしょう。なので、魔王城へも明日には到着しているのでは、ないでしょうか。

イーラ:へ・・・へぇ〜・・・!すごーい・・・。

ビビアン:何年先になるかは、わかりませんが。きっと、今に訪れるでしょう。

ヴェル:そうか。

イーラ:・・・すごいなぁ・・・。

ビビアン:・・・ところで、イーラさん、どうですか。その服の着心地は。

イーラ:へ?あ・・・はい、すごく良いです。

ビビアン:そうですか。まぁ、普段着ですが、そちらもとても似合ってますね。

イーラ:ふぇ?・・・えへへ・・・ありがとうございます。・・・ねっ、ヴェルは?どう思う?

ヴェル:ふむ。よく似合っておる。

イーラ:・・・にへへ。ありがとう。

ビビアン:では、私はそろそろお師様のところへ戻ります。

ヴェル:そうか。

ビビアン:あ、あと、イーラさん、ヴェルさん。

イーラ:はい、なんでしょうか。

ビビアン:祭りの翌日、今日から3日後ですね。神兵団本部にいらしてください。魔大陸へ渡る手続きなどを行いましょう。

ヴェル:・・・ふむ。

ビビアン:今度は、手荒な真似はしません。安心してください。さて・・・私はこれで失礼しますね。あまり遅いと、お師様がまた良からぬ悪戯を思いついてしまうかもしれませんから。

イーラ:・・・あ、あはは。

ヴェル:・・・ふむ。

ーーーーー

ーー夜もふけ、1度訪れた宿屋へ二人は再び訪ねる。

ーーーーー

イーラ:(ドアを開けて)こ、こんばんわー!

宿の受付:いらっしゃーい!おぉ、お客様は!

ヴェル:先日ぶりである。

宿の受付:いえいえ、まさかまさか、神前試合の騎士様だったなんて、知りませんでした。

ヴェル:よい。

宿の受付:その節は失礼しました。ところで・・・こちらの方が・・・?

ヴェル:そうだ。

宿の受付:おぉ・・・

イーラ:え・・・な、なんですか?

宿の受付:いえいえ、まさかこんな近くでお目にかかれるとは、と思いまして。

イーラ:わ、わたし・・・

宿の受付:街中で噂になっていますよ。神前試合でそれはそれは美しい少女が表彰をされたと。

イーラ:そ・・・そんなこと、ない、です。

ヴェル:して、一部屋、借りたいのだが、やはり空きはないか。

宿の受付:えっとー、ちょうど1部屋だけキャンセルが出たところなんですよ。

ヴェル:そうか。

イーラ:ほんと!?やった!

宿の受付:空いている宿がなかったですか?

ヴェル:そうだ。

宿の受付:そうでしょう。

イーラ:一部屋ってことは・・・ヴェルと一緒、かな?

ヴェル:ふむ。そうだな。

宿の受付:えーっと、ちょうどお二人様向けの部屋です。

ヴェル:ふむ。では、そこを借りてもよいか。

イーラ:やったー!

宿の受付:わかりました。・・・ところで・・・

ヴェル:ふむ。どうした。

宿の受付:2週間前にいらっしゃった後、他の宿は見つかりましたか?

ヴェル:ふむ。どこも空きはなかった。

イーラ:・・・え?じゃあ、ヴェル、その間どうしてたの?

ヴェル:ふむ。外を歩いておった。

イーラ:へ・・・へー・・・。

宿の受付:ご苦労をおかけしました。三日間でよろしかったですか?

ヴェル:ふむ。それで頼む。

イーラ:ね、ねぇ、ヴェル。お風呂は、どうしてたの?

ヴェル:私には必要ない。

イーラ:・・・そ、そうなんだ。・・・確かに、みたことない・・・かも。

ヴェル:ふむ。

イーラ:・・・お風呂・・・ちゃんと、入って欲しいなぁー・・・

ヴェル:・・・ふむ。そういえば、今日は体を動かしたので、入ることとする。

イーラ:・・・そ、そうした方がいいと思う。

ーーーーー

ーー翌日、お祭りをみて回る二人。

ーーーーー

ヴェル(M):そうして、残り2日間、イーラと私は、バルミスで催される神の誕生祭を見て回っていた。

ギルディ:(街の人に話しかけられて)おぉ、達者かのう。がっはっは!よいよい。

ヴェル:・・・なぜ。

ギルディ:(街の人に話しかけられて)そうだか、平和の世だから、のう。今や良き友である。

ヴェル:なぜ、貴様がおる、ギルディ。

ギルディ:ぬぅ?良いではないか、のう、イーラ。

イーラ:え!は、はい!

ギルディ:余とイーラは友達じゃからの。

ヴェル:ほう、そうなのか。

イーラ:え!?えっと・・・

ギルディ:そうじゃろう?

イーラ:え・・・えと、えっと・・・

ヴェル:ふむ。

ビビアン:お師様、買ってまいりました。

ギルディ:そうかそうか、ビビアン、どれ・・・(魚の刺身をつまんで食べる)・・・おぉ、今年もまた一段と上手くなっておる。

イーラ:あ、あの、それなんですか?

ビビアン:近海で獲ることのできる白身魚の生身です。そこに、木の実の油と塩、酢、それにちょっとした香辛料をかけた、マリネ、という食べ物です。

ヴェル:生魚か。

イーラ:え!?生のお魚?

ビビアン:そうです。

ギルディ:イーラも欲しいか?うまいぞぉ。

イーラ:食べたい!

ビビアン:・・・はぁ、お師様に対して・・・いえ、業務外ですのでやめましょう。・・・どうぞ、ヴェルさん、イーラさん、全員分、そこの出店で買ってきました。

ヴェル:ふむ。

イーラ:あ、ありがとうございます。

ビビアン:こちらのフォークもどうぞ。

イーラ:ありがとうございます!・・・ね、なんか透き通ってるよ!

ヴェル:そうだな。

イーラ:おいしそー・・・わぁぁぁ!いただきまーす!・・・あーんっ(もぐもぐ)

ヴェル:味はどうだ。

イーラ:んー!!!おいしー!!!

ヴェル:そうか。

ギルディ:旨そうに食うのう。がっはっは!こりゃ孫ができた気分じゃ。

ヴェル:・・・貴様はそんな年ではないだろう。

ギルディ:ぬぅ?そうかのう、余も立派なじじいじゃがのう・・・まぁよい。ほれ、貴様も食うてみぃ。

ヴェル:ふむ。・・・では(フォークで食べる)

イーラ:どう?どう?ヴェル!

ヴェル:ふむ・・・なるほど。これは、なかなかである。

ビビアン:そうですか。お口にあいましたか。

イーラ:えへへ・・・ちょっと食べるのもったいないなぁ・・・でも・・・あー・・・んっ(もぐもぐ)

ギルディ:(魚の刺身をつまんで食べる)・・・ぬぅ?ビビアンは食わんのか?(おちょくるように)

ビビアン:・・・人前ですから。

イーラ:んー・・・おいしー!!

ヴェル:ふむ。(フォークで食べる)なかなか。

ビビアン:・・・。

イーラ:あー・・・あれ?ビビアンさんは食べないんですか?

ビビアン:・・・ひ、人前ですから。

イーラ:ん?・・・嫌いなの?

ビビアン:い、いえ、そう言うわけでは。

ギルディ:ぬぅ?・・・そうか、嫌いか。では、余が代わりに食うてやろう!

ビビアン:そ、それは!お、お師様だからといって、許しません!!さ!さて、人だかりが出来てきましたから、一度目立たない場所へ移動しましょう。(去る)

ヴェル:・・・ほう。

イーラ:・・・好きだったのかな?

ギルディ:人に物を食う姿を見せるのが、小っ恥ずかしいらしい、のう。

イーラ:・・・ちょ、ちょっと、意外。なんか、かわいいね。

ヴェル:ふむ。・・・そうだな。

ーーーーー

ーー翌日、お祭りをみて回る二人。

ーーーーー

ヴェル(M):イーラは、朝から晩まで街を駆けずり回り、気になる物を見つけては、嬉しそうにはしゃいでおった。時に街の者より声をかけられ、その都度照れているイーラを見ると、不思議と私も嬉しくなったのだ。

ーーーーー宿の部屋で

イーラ:あー・・・足痛い・・・。

ヴェル:大丈夫か。

イーラ:大丈夫ー・・・。はー・・!くたくた。

ヴェル:はしゃぎすぎだ。

イーラ:だって、楽しかったんだもん。

ヴェル:・・・そうか。

イーラ:私ね、ヴェルと一緒だとね。

ヴェル:ふむ。

イーラ:何してても楽しいんだ!

ヴェル:・・・そうか。

イーラ:・・・にへへ。

ヴェル:して、イーラよ。もう遅いので、風呂に入るといい。

イーラ:はーい。・・・ん、ねぇ、ヴェル。

ヴェル:どうした。

イーラ:ヴェルも、ちゃんと入ってね?

ヴェル:ふむ。・・・わかった、ちゃんと入る。

イーラ:ん、よろしい。にへへ、じゃぁ先行くねー!

ヴェル:うむ。

ーーーーー

ーーイーラがお風呂から上がってくる

ーーーーー

イーラ:ただいまー!

ヴェル:ふむ。

イーラ:次は、ヴェルの番ね!

ヴェル:わかった。

イーラ:じゃ、待ってるね!

ヴェル:ふむ。疲れておるのだろう。待つ必要はない。

イーラ:にへへ、うん。ありがと!

ーーーーー

ーーヴェルもお風呂に入って上がってくる

ーーーーー

ヴェル:・・・上がったぞ、イーラよ。

イーラ:(ヴェルの布団の上で半分寝てる)・・・ふぇ、おかえりー。

ヴェル:まだ起きておったか。

イーラ:・・・うん、おきてたー・・・。

ヴェル:そうか。

イーラ:・・・ね、こっちきてー。

ヴェル:だめだ。

イーラ:・・・ねぇー。

ヴェル:だめだ。

イーラ:・・・ねぇってばー・・・。

ヴェル:・・・わかった、イーラよ、なぜ自分の布団で寝ないのだ。

イーラ:・・・んー?・・・こっちのがいいー・・・にへへ。

ヴェル:・・・そうか。ふむ。(イーラの横に腰掛ける)

イーラ:ねぇ、ヴェル。

ヴェル:どうした。

イーラ:・・・頭、撫でてー・・・

ヴェル:・・・ふむ。

イーラ:・・・にへへ・・・

ヴェル:イーラよ。

イーラ:・・・なーに?ヴェル?

ヴェル:今日は、話は聞かぬのか?

イーラ:んー・・・今日はこのままがいい。

ヴェル:・・・そうか。

イーラ:うん・・・にへへ・・・。

ーーーーー

ーー神兵騎士団要塞本部

ーーーーー

ヴェル(M):二日間はあっという間に過ぎた。私たちは、次の目的地へ向けて、また、この街へ別れを告げるために、ギルディの元を訪れたのだ。

ギルディ:どうだったか、余の誕生祭は。

イーラ:とても楽しかったです!

ギルディ:がっはっは!そうかそうか、それはなにより。

イーラ:すごいですね、みなさん、がんばってました・・・!

ギルディ:そうじゃろう。子等は、日々を強く生きておる。・・・のう、ヴォルカス。

ヴェル:ふむ。

ギルディ:余のことは未だ憎いか?

ヴェル:・・・わからん。

ギルディ:・・・そうか。では、余のことは嫌いか?

ヴェル:当然だ。

ギルディ:そうか・・・がっはっは!

イーラ:・・・な、なんで嬉しそうなんですか?

ギルディ:ぬぅ?・・・それが、旧知の仲というものよ。

イーラ:え・・・そうなんですか?

ギルディ:そうだ。いずれわかる。

ヴェル:ギルディよ。

ギルディ:なんだか?

ヴェル:私は、貴様の言うことをようやく理解した。

ギルディ:そうか。

ヴェル:だが・・・聖戦において、なぜ、あの様なことをしたか、それが未だにわからん。

ギルディ:ぬぅ?・・・同じことだか。

ヴェル:ほう。

ギルディ:人は時に己が命の尊さを忘れる。人は時に己が生の儚さを忘れる。

ヴェル:・・・続けよ。

ギルディ:戦いは、時にその事実を教え、人に前へ進むということを気づかせる、ということだ。

ヴェル:・・・そうか。

ギルディ:相いれんか。

ヴェル:・・・そうかもしれんな。私は、戦うことが何かを作ること、それを未だに納得できん。

ギルディ:そうか。がっはっは!よいよい、長く生きたとて、余も貴様も、生きる者であることは変わらん。

ヴェル:ふむ。

ギルディ:この違いこそ、尊いのだ。

ヴェル:・・・そうか。

ギルディ:ヴォルカス。

ヴェル:なんだ。

ギルディ:この世界は、好きか。

ヴェル:・・・どうだろうか。

ギルディ:そうか。がっはっは!・・・さぁて、イーラよ。

イーラ:は、はい!

ギルディ:すまん、のう。つまらん話だったか。

イーラ:い、いえ・・・でも、難しかったです。

ギルディ:そうかそうか。・・・イーラ。

イーラ:はい?

ギルディ:魔王の城から、朝日を眺めるのだった、か。

イーラ:はい、なんでしょうか。

ギルディ:・・・いつでもいい、そこで何を見たか、いつか余にも教えてくれ、のう。

イーラ:は・・・はい、わかりました!

ギルディ:では(立ち上がる)余は催しの片付けに、戻るとするか、の。ビビアン!

ビビアン:(入ってきて)はい、お師様、お話は終わりましたか。

ギルディ:そうだ。では、あとは頼む。

ビビアン:はい。わかりました。

ギルディ:おぉ、そうじゃそうじゃ。ヴォルカス。

ヴェル:ふむ。なんだ。

ギルディ:イルミアにあったら、よろしく伝えてくれ、のう。

ヴェル:・・・わかった。

ギルディ:では、の。がっはっは!

ーーギルディ退出する。

ビビアン:では、このまま手続きをさせていただきますね。ヴェルさん、イーラさん、こちらにサインをお願いします。

イーラ:これなに?

ビビアン:魔大陸への渡航手続きです。

ヴェル:ふむ。

ビビアン:渡るのに船で10日ほどかかりますので、ここ、バルミスの出港からふた月の許可書を発行しました。

イーラ:は、はい!サインしました。・・・ヴェルも大丈夫?

ヴェル:ふむ。大丈夫だ。

ビビアン:ありがとうございます。こちら、渡航許可書です。必ずお荷物に入れておいてください。

イーラ:はい!

ビビアン:一応ですが、魔大陸で注意していただきたいことが1点だけありまして。

イーラ:なんですか??

ビビアン:魔大陸の各所には魔族の村があります。一部の地域ではまだ、人に対して敵意を持った部族もあると聞きます。

ヴェル:ふむ。そうか。

ビビアン:そのため、今回の旅では魔大陸の港「マザー」から魔大陸中心部へ向かう道以外は、通らぬよう。

ヴェル:わかった。

ビビアン:それと、個人的にお伝えしたい事柄ですが・・・きっとあなたなら大丈夫なのでしょうけど、現在魔王城付近の区域は立ち入り禁止になっています。

イーラ:そ、そうなんですか?

ビビアン:はい。魔術でもかけられているのか、抵抗ができない者では辿り着けないそうです。案内人を用意する方がよいそうです。

イーラ:え・・・だ、大丈夫かな?ヴェル?

ヴェル:・・・。

イーラ:・・・ヴェル?

ヴェル:・・・すまない、考え事をしていた。

イーラ:ふぇ?珍しいね。

ヴェル:・・・ふむ。・・・城への道は大丈夫であろう。

イーラ:・・・そっか。うん!

ビビアン:思い当たる節があるんですね。

ヴェル:・・・そうだ。・・・して、ビビアンよ。

ビビアン:なんですか?

ヴェル:そなたは、船に乗るのか?

ビビアン:いいえ、私は業務がありますので。一応、私の部下数名を同行させます。

ヴェル:そうか・・・それと。

ビビアン:なんでしょうか?

ヴェル:向こうへ着いたときに案内を頼みたい者がおるのだが、私が直(じか)に出向いて良いか。

ビビアン:案内ですか。

ヴェル:ふむ。どうにも、騒ぎになるのを避けようとしているのでな。

ビビアン:ふふふ、そうですね。どこの者でしょうか。

ヴェル:ふむ。イーラよ。

イーラ:あ、うん!えっと・・・これなんですけど・・・(コロボからもらった紙を渡す)

ビビアン:・・・あぁ、この者は。

イーラ:そうです。ここに来る途中のトレイルで一緒になった・・・

ビビアン:あの若い魔族ですか。・・・ここならマザーから近い炭鉱付近の街なので、先に伝令を飛ばして、マザーへ出向くように伝えましょう。

イーラ:ほんとに!?ありがとうございます!

ビビアン:いえいえ。・・・それと・・・。

イーラ:ん?それと?

ビビアン:魔王城付近というのは、すみませんが、私もよくは知りません。

ヴェル:・・・そうか。

ビビアン:まぁ、ヴェルさんなら大丈夫と思いますが、くれぐれも気をつけてくださいね。

ヴェル:ふむ・・・。心得ておく。

イーラ:はい!わかりました!

ビビアン:では、西側の防壁を抜けた先にバルミスの港があります。そこの5番ポートに軍の戦艦をつけていますので、そちらの者に声をかけてください。

イーラ:はい!ありがとうございます。

ビビアン:私は、これで、失礼させていただきますね。

ヴェル:世話になった。

ビビアン:お二人の旅が、良いものとなるよう、神に祈っております。

イーラ:え?・・・にへへ・・・。ね、ビビアンさん!

ビビアン:なんでしょうか?

イーラ:ビビアンさんも、お元気で!また、会いにきます!色んなこと教えてください!

ビビアン:・・・ふふ・・・わかりました。楽しみにしていますね。イーラさん。では。(ビビアン退出)

イーラ:・・・ねぇ、ヴェル。

ヴェル:どうした、イーラよ。

イーラ:本当に。。。本当に私たち、魔大陸にいけるんだね。

ヴェル:そうだな。

イーラ:長かったけど、短かったなぁ・・・。

ヴェル:・・・そうか。

イーラ:ねぇ、冒険、もう終わっちゃうのかな?

ヴェル:ふむ。もう少し、終わらないのでは、なかろうか。

イーラ:ふぇ?・・・なんで?

ヴェル:・・・そうだな。まだ、もう一つ、礼を言わねばならん者がそこにおるから、だ。

イーラ:・・・そっか。じゃぁ、早くその人に会わなきゃね!

ヴェル:・・・ふ。そうだな。

イーラ:・・・えへへ・・・よいしょ!(立ち上がって)さ!いこ!ヴェル!

ヴェル:ふむ。(立ち上がって)そうだな。

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ーーただ君だけを、守りたいと願う〜王冠〜

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